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新紙幣に採用される3Dホログラムとホログラム映像 何が違う?

2024.5.13

2024年7月に発行される新紙幣。目玉のひとつが3Dホログラムです。ただし、ホログラムといっても立体的な映像が浮かび上がるものではなく、極めて薄いフィルムのようなホログラムを刷り込むことにより、見る角度によって図柄を変化させる印刷技術を使ったもので、肖像が回転するように見える世界初の偽造防止技術が使われています。今回はこの画期的な新紙幣のホログラムを取り上げるとともに、映像のホログラムと印刷のホログラムがどのように違うのか解説します。

新紙幣のホログラムはここがすごい!小さな箔押しに凝縮された技術

ホログラム

いよいよ2024年7月3日に新紙幣が発行されます。約20年ごとに新しいものが誕生してきた日本の紙幣には、それぞれの時代における最高レベルの偽造防止技術が導入されてきました。

今回の新紙幣にも凹版印刷、繊細なすかし、光る特殊インクなどの技術が使用されていますが、中でも注目されているのが3Dホログラムです。それぞれの紙幣に印刷されているキラキラ光る肖像が紙幣を傾けると回転し、まるで顔の向きが変わっているように見えます。この技術が紙幣に取り入れられたのは世界初なのだとか。

このような紙幣やクレジットカードに印刷された「キラキラ」は「ホログラム」と呼ばれます。「ホログラム」というのはギリシャ語で「すべて」を意味する「holo」に由来します。技術的に言うと、この場合の「すべて」は光の「強さ(振幅)」と「色(波長)」と「方向(位相)」を指します。

2次元の写真が記録するのは光の「強さ」と「色」の2つだけですが、ホログラムはそれに「方向」を加えた3つの情報を、レーザー光によって記録・再生します。これがそこにないモノを存在するかのごとく、立体的に見ることを可能にしているのです。

ただ、基本のホログラムはレーザー光を当てて再生しますが、日常的に使用する紙幣でレーザー光は使えません。そこで、キラキラ光る特殊印刷で光を分ける(分光する)ことにより、太陽光などの自然光で再生できるように工夫されています。これが虹色に光るレインボーホログラムです。

空中に浮かび上がる立体映像もホログラム!?実用化されるのはいつ?

ホログラム

ホログラムという言葉を聞くと、SF映画で空中に浮かび上がる立体映像を連想する人もいるでしょう。本来、ホログラムは光の3次元的な記録技術を指しますが、この技術を使えばそうした立体映像を作ることも理論的には可能です。

しかし、そのためには高度な技術と大掛かりな装置に加え、写真や動画をはるかに超える大量のデータ、そしてそれを送信する高速で大容量の通信技術が必要です。ただ、残念ながら今のところこうした条件を揃えるのは難しく、クリアで違和感のないリアルな3Dホログラムはまだできていません。6G(第6世代の高速移動通信システム)が使えるようになればと言う科学者もいれば、2030年頃に実用化されることを予測している人もいます。

本物の3Dホログラム映像が見られるのはもう少し先になりそうですが、現在でも様々な技術を駆使した疑似ホログラムなるものが作られており、すでに各分野で活用されています。

例えば、透明スクリーンやミストに映像を映し出すプロジェクション方式、ガラスに映りこんだ光を利用するペッパーゴーストなどが、疑似ホログラムとして挙げられます。最近では専用のゴーグルとARやVR技術によって、何もないところにリアルな3D映像を再現できるようになりました。立体映像の需要は高く、エンターテインメントの世界はもちろん、ビジネスシーンでの利用も進んでいます。

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動くホログラムや触れるホログラムも?広がる3Dホログラムの活用

ホログラムには今後も様々な場面での活用が想定されています。印刷技術としてホログラムを使う時の代表的な例は、新紙幣に見られるような偽造防止対策や真贋判定です。この技術をすでに導入した事例として挙げられるのが、角度を変えたりスマホのLEDライトを当てたりすると、文字や絵が浮かび上がる特殊なホログラムのシールです。

ホログラムの作成には高度な技術や装置が必要となるため、まったく同じホログラムを作ることは不可能とされています。しかし、特別な知識がない人でも静止ホログラムが使われていれば、購入する時に本物か模倣品かを簡単に判断できるのです。

また、新しい紙幣にも導入されましたが、ホログラムに「動き」が加わることで、アニメーションやデジタルサイネージへの活用も検討されています。印刷された1枚の静止画にアニメーションを組み込めれば、絵本や図鑑、ポスターなどがもっとインパクトのある楽しいものになりそうですね。

もちろん、立体映像のホログラムが登場することも期待されています。これが実現すれば相手の立体映像を表示させることにより、まるで隣にいる相手と話しているような通話が可能になるかもしれません。空中に浮かんだ3Dホログラムを使って、触れることなくデバイスを操作する技術も開発中です。近い将来、ホログラムで空中に浮かび上がったディスプレイを自分の指で「触って」、様々な機器を扱うことも夢ではなくなるかもしれません。

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キラキラにワクワク!新紙幣だけじゃない、未来の三次元ホログラムに期待

普段私たちがクレジットカードや紙幣で目にしている小さな「キラキラ」には高度な技術が詰まっています。もうすぐ発行される新紙幣を手にしたら、ぜひ様々な角度からホログラムを眺め、その高度な技術を楽しみたいですね。SF映画に出てくるような空中に浮かぶホログラムは、実現されるまでにもう少し時間がかかりそうですが、技術の進歩を見守っていきたいものです。

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【執筆】ユピスタ編集部
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