自動認識技術の基本的なものである、バーコードやQRコード※ は、今やあらゆる場面で活用され、私たちの生活にすっかり溶け込んだものとなっています。これらはどんな仕組みで情報を記録しているのでしょうか。いろいろなバーコードの種類と仕組み、さらには次世代バーコードと呼ばれる新しい技術を紹介します。
日常に溶け込んだQRコード。1次元から2次元へ進化した、バーコードの未来とは
物流で活躍する1次元バーコード。商品のリニューアルも把握するその仕組みとは
バーコードは名前の通り、太さや間隔の異なる黒いバー(棒)で特定の情報を表します。これをレーザー光などでスキャンすると、パターンがモールス信号のように数字として認識され、POS(point of sale system=販売時点情報管理)などのシステムに登録されているデータへ変換されます。横方向(水平方向)に情報を書き込んでいるので、1次元コードと呼ばれることもあります。
バーコードは一見、どれも同じように見えますが、実は100以上の種類があり、国や業種によって異なるものが使われています。バーの下にある文字をよく見てみると、数字以外にアルファベットやアスタリスクが使用されているなど、その違いに気づくかもしれません。日本で一番普及しているのは、8桁か13桁の数字で表されるJANコード。コンビニやスーパーのレジで使われているおなじみのバーコードです。JAN-13と呼ばれる13桁のJAN(Japanese Article Number)は、ヨーロッパのEAN(European Article Number)、アメリカ・カナダのUPCと互換性があり、最初の2桁が国番号、次の7桁が事業者番号、次の3桁が商品コードとなっており、この数字で商品を判別する仕組みです。なお、最後の数字は読み誤りがないかをチェックするためのもので、チェックデジットと呼ばれます。
バーコードは40年ほど前に実用化されましたが、今では身の回りにある多くの製品に使われていて、特にレジ待ちの混雑解消には大きく役立っています。しかし、社会の変化や物流の発達に伴って、国番号や商品コードだけではなく、商品により多くの情報を盛り込みたいというニーズが出てきました。バーコードで表せるのは、せいぜい数十文字程度。そこで開発されたのが、横方向だけではなく縦方向(垂直方向)にも情報を盛り込めるバーコード、2次元コードです。
もう見慣れたQRコード。小さな四角に漢字も入り、汚れにも強い驚きの性能
2次元コードには、バーコードを積み重ねた「スタック型」と、セルという小さな白黒のマスを正方形に並べた「マトリックス型」があります。いずれも情報を横方向だけでなく、縦方向にも書き込むことで盛り込める情報量は飛躍的に増加。1つのコードに2000〜3000文字分の情報が記録できるようになりました。ちなみにこの2次元コード、バー(棒)は使われていませんが、バーコードあるいは2次元バーコードと表記されることも多々あります。
そして、このマトリックス型2次元コードのひとつが、いわゆる「QRコード」です。QRコードの4隅のうち3つには小さな四角形があり、これによってどの方向からでも読み取ることが可能。誤り訂正機能も盛り込まれているので、3割程度の汚れなら読み取りに問題はありません。中央に独自のデザインを入れられるフレームQRコードや、小さな機器や基盤にも使用できるマイクロQRコード、省スペースに対応可能な長方形のrMQRなども登場しました。
2次元コードはスマホにQRコードの読み取りアプリをインストールすれば簡単に読み取れるため、日常での活用が進み、とても身近な存在になりました。精算はもちろん、商品や店舗情報、連絡先のやり取り、飛行機やイベントのチケットなど、生活のあらゆる場面で大活躍。ただ、それに伴って別の問題が浮上しました。まずはセキュリティ面。そして、一度に複数のコードを読み取ることができないことです。これらの課題をクリアするため、今、次世代のバーコードが次々に開発されています。
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QRコードだけじゃない、次世代の2次元バーコードは安全や効率に寄与
例えば、「SQRC」と呼ばれる読み取り制限機能を搭載した新しいQRコードがあります。1つのコードに公開情報と非公開情報が記録されており、非公開情報は特定のコードリーダーでしか読み取れません。このQRコードは金融機関などで活用されています。さらに、肉眼では見えない透明なQRコードも新登場。赤外線を当てるまで見ることができないので、セキュリティの強化に役立ちます。
複数のコードを一括で読み取れる2次元コードも開発され、DX推進を後押ししています。例えば、棚に並んだ大量の商品に付いているコードを、スマホやタブレットの専用アプリで一度に読み取れるため、商品の在庫管理やフロアマップの作成などに利用されています。また、検出範囲がこれまでの100倍もあり、例えばソファに座ったままテレビの画面に映ったコードを読み取れるような2次元コードも登場しました。
一方、1次元のバーコードも進化中。横長の看板の下にさりげなく入れることができる縦横比1:24という帯状のバーコードや、最大8色の配列をコード化したカラフルなカラーバーコード(カメレオンコード)などがあります。さらには、電子タグに記録された情報を電磁波で読み取る次世代コード、RF(RFID)タグも身近になりました。商品を袋や段ボール、カゴに入れたままでも読み取れるため、店舗で複数の商品を一括で精算する際や、図書館で蔵書の管理をする時などに活用されています。
マルウェア対策も入念に。進化を続けるQRコードは世界を変える?
バーコードにもQRコードにもそれぞれ用途に合った使い方があり、どちらかがより優れているというわけではありません。さらに、普及すればするほどマルウェア(悪意のあるソフトウェア)や不正利用などへの対策が求められるため、今後も安全で使いやすい新コードが生まれてくるでしょう。小さなコードは私たちの世界を少しずつ、より便利で安全なものに変えているのです。
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※QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
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