ユピスタではこれまで様々な角度から交通の未来をご紹介してきました。今回は、夢の空飛ぶクルマ、エアモビリティの未来についてご紹介します。早ければ2025年には公の場で披露されるといわれているエアモビリティは、いったいどんな未来を見せてくれるのでしょうか。また空飛ぶクルマの安全を実現させる最新技術、エッジコンピューティングと量子コンピューターについても解説します。
エアモビリティは何故ぶつからない?量子コンピューターが制御する未来
エアモビリティが万博に登場?
「空飛ぶクルマ」と聞くと、路上を走っている車が、そのまま空へ舞い上がるような光景を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、現在研究が進められている「空飛ぶクルマ」は実は、ヘリコプターや、人が乗れるサイズのドローン型が中心です。それでも「クルマ」と表現するのは、移動に使える日常的な交通手段として実現しようという意図が込められているからです。
空飛ぶクルマの研究開発には、自動車業界だけでなく大小のベンチャーや自治体も力を入れており、実用化は目の前まで近づいています。2021年11月には、インドネシアで初のデモ飛行が成功。日本政府も2025年の大阪・関西万博に向けたアクションプランの案をまとめており、2年間の実証実験を行った後に、万博会場での実演が予定されています。
空飛ぶクルマは様々なカタチやシステムのものが開発されていますが、それらすべてに共通しているのが、「自動操縦」であること。なぜなら自動操縦は、ヒトが運転するよりもはるかに安全だからです。自動車事故の9割以上は、実は脇見運転や速度違反といったヒューマンエラー。もし、そうした事故が空の上で発生すれば、地上で起こる事故よりはるかに被害が大きくなるでしょう。実際、飛行機はほとんどがすでに自動操縦です。しかし問題は、これがブルーインパルスのように、大空を大量に整然と、自動操縦で行き交う必要があるということです。そのためにもまずは地上で、完全自動運転が成立している必要があります。
レベル5を目指す。完全な自動運転の世界
ここで地上での自動運転技術の現状を見ていきましょう。実は自動操縦・自動運転は、空の上よりも地上の方がある意味難易度が高いとされています。飛び出しや道路工事など、地上には予測できないトラブルが多数存在してからです。
自動車の自動運転技術はレベル0〜レベル5に区分されていますが、現在一般に流通しているのは自動ブレーキや、ペダルの踏み間違いを防ぐ装置など、レベル2までの機能を搭載した自動車です。レベル3や4になると限定エリアにおいてのみ自動運転が可能になりますが、現時点では実証実験の段階。ドライバーの操作が一切不要なレベル5となるには、まだまだ多くの課題をクリアしなければなりません。
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また自動運転の車が増えれば増えるほど、それらを管理するクラウドの負担は膨大なものとなるため、インターネットシステムの改良も不可欠。そんな今、注目されているのが、エッジコンピューティングです。クラウドにすべての情報を集積してフィードバックさせる「中央集権的」なシステムに対し、エッジコンピューティングはデータを集めて活用する「現場」に近い「周縁(エッジ)」にサーバーを設置。よりタイムラグのない、リアルタイムな情報処理を可能にします。
自動運転技術と、エッジコンピューティング。それらを5G、6Gなどの移動通信システムと組み合わせることで、ぶつからない、安全で完全な自動運転の実現が見えてきます。
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量子アニーリングとは?エアモビリティがぶつからないワケ
さて空の上のクルマに話を戻しますと、完全な形での自動運転は、地上においてもまだ開発段階であることに加え、エアモビリティにはさらに別の課題があります。前述のとおり決まった公道がない空中だからこそ、衝突の回避を制御しきれないのです。個々の車両の状態、気象、電波など、指数関数的に増えていく組み合わせに対して、従来のコンピューターでは解答を導き出せないと考えられています。
そこで、エアモビリティを安全に実現させるために必要とされているのが「量子コンピューター」、そして「量子アニーリング方式」という最適化の手法です。「量子アニーリング」は量子(物理上の最小単位で表した物理量)の特性を利用し、瞬間的にエアモビリティ同士がぶつからない最適なルートを導き出す技術。量子力学の中でも「量子もつれ」という特性がありますが(某有名宇宙探査船のドラマでよく使われる言葉です、ご存知でしょうか?)、量子アニーリングはこれを一部利用した技術です。
量子もつれとは、量子は必ず2組のペアになっていて、片方の特性が決まるとどんなに遠くに離れていてももう一方の特性が瞬時に決定するという不思議な現象です。この現象が起きる理由ははっきりとは分かっていませんが、こうした不思議な特性を活用したテクノロジーが多く生まれつつあり、「量子アニーリング」もその一つ。爆発的に増える組み合わせを、熱した金属を焼きなます(アニーリング)ように瞬間的に整然と最適化できるという量子コンピューターの特性を活かし、大量に飛び交うエアモビリティを互いに衝突することなく制御しようというのです。
量子コンピューターに関しては、日本政府として2030年までに100量子ビットの量子コンピュータの実用化を目指すという方針が出ています。また量子アニーリングマシンが実用化を競う時代に入ったと発言する研究者もおり、今後の動向が注目されます。
クルマに乗り込み、行き先を入力するだけで、すべてのクルマが最適なルートを走り、渋滞も、クルマ同士の衝突事故もない。空でも地上でも、安全で完全な自動運転が実現する社会は一歩ずつ近づいています。
交通の未来が新しい世界を創る
交通の進化は時代を映す鏡。近年における5G、エッジコンピューティング、量子コンピューターなどの技術革新は、自動運転や空飛ぶクルマといった、人類の夢とその実現を支える技術です。
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モビリティの進化とともにあるユピテル。最新の3カメラドライブレコーダー「Y-3000」(カー用品量販店モデル)、「Z-300」(カーディーラー専売モデル)(特設サイトはこちら)をはじめとしたカー用品の開発・販売を通じて、さらなる車社会の安心安全に貢献しています。これからも技術革新を導く企業として、モビリティの未来に携わっていきます。
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