コロナ禍によって注目されることとなった、非接触型ソリューション。特に、人工知能やディープラーニング(深層学習)などの技術の発達により、生体認証の精度は日々高まり、生活に欠かせないものとなりつつあります。しかしその一方で、プライバシーの問題や、生体認証をすりぬける高度化した犯罪技術の問題も。そんな生体認証に関する最新情報を分かりやすく解説します。
Z世代の新常識。DX推進を加速させる生体認証の今を探る
DX化が生体認証を後押し!バイオメトリクス認証は指紋や耳の形でも?
生体認証(バイオメトリクス認証)というのは、人体の一部を「カギ」あるいは「パスワード」として使うシステムです。あらかじめ顔や指紋、声などの身体的特徴を登録しておき、認証時に照らし合わせることで、本人かどうかを特定・確認します。
生体認証は現在、スマホのロック解除、ビルやオフィスの入退室、イベントチケットの本人確認、空港の搭乗ゲートなど、様々な場面に導入されています。
一番メジャーな手法はやはり指紋認証です。他には、手のひらをかざし、静脈や手のひらの筋模様を読み取る生体認証も登場しました。静脈認証は指紋認証の10倍という精度を誇るのだとか。さらに、顔を構成するパーツの位置やバランスを読み取る顔認証、瞳の虹彩のパターンを読み取る虹彩認証、耳や外耳道の形を読み取る耳介・耳音響認証、声を利用した音声認証、筆跡やマウス操作などを利用した行動認証など多くの生体認証システムが研究、開発されているのです。
生体認証システムのメリットは何でしょうか。まず認証される側としては、いちいち文字のパスワードを覚えなくていい、というのが大きなメリット。最近は様々なサービスでパスワードの入力を求められるようになりました。対応するパスワードを忘れてログインできなくなってしまった、という状況はよくありますよね。その点、生体認証なら体一つでOK。また、生体認証の多くは非接触で行われるので、感染症対策という点でも安心です。認証する側にとっても、本人確認のために利用者の流れを止める必要がなくなり、よりスムーズかつよりセキュリティの高い生体認証は大きなメリットとなります。
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こんなに高精度!生体認証はディープラーニング技術の発達とともに進化
日々進化を続けている生体認証。しかし、自分の体を構成するパーツが他の誰とも違う唯一無二の特徴を持っていることは、生体認証が登場するよりずっと昔から知られていました。何と、紀元前6000年頃には個人認証に指紋が使われていたそうです。日本の時代劇でも「血判状」なんてモノが登場しますが、これも指紋が個人識別にひと役買うことを当時の人たちが知っていたからです。
実際の指紋を個人の特定に使う「指紋法」が確立されたのは1890年代。日本の警察では1900年代に入り、犯罪捜査に指紋が使われるようになりました。コンピュータが使われるようになると照合技術が上がっていき、生体認証はいよいよ本格的に活用され始めます。そして近年、AIのディープラーニング機能が登場したことで、生体認証の実用化が加速しました。
ディープラーニングとは、人間の神経細胞の仕組みをモデルにしたAIの学習システムです。データの特徴や背景を、より多層的に学習することができるようになりました。中でも画像認識や音声認識機能、とりわけ画像認識技術の進歩はすさまじく、以前ご紹介しましたが、今やAIの画像認識は人間よりはるかに高い精度を誇ります。ある日本企業のディープラーニングを使った最新顔認証システムは、他人のデータと照合した時に誤って承認してしまう「他人受け入れ率」がなんと10万分の1。しかもこのディープラーニングには、学習すればするほど精度が上がっていくという特徴があり、今後はさらに進化していくことが期待されています。
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複雑化する生体認証を利用した犯罪。プライバシー問題と切っても切れない生体認証
ディープラーニングなどで進化しているとはいえ、もちろん生体認証にも課題はあります。まず、精度が飛躍的に上がったといっても「常に100%」ではありません。前述したように他人を受け入れてしまう誤判定も起こりえますし、認証に使う身体的特徴の変化や外部環境の影響で認証できなくなることも。例えば指にケガをしたら指紋認証は使えませんし、明るさや騒音などの環境的な条件、髪型の変化やマスクなど、生体認証に影響を与える要素は意外とたくさんあるのです。
また、高度なセキュリティを誇る生体認証ですが、偽造される可能性もゼロではありません。「古典的」な手口だと、本人が寝ている間にこっそり指を使われ、スマホのロックを解除されるといったケース。今ではもっとハイテクな手口も存在します。SNSにアップした誰かの手の写真から指(指紋)のコピーを作る。レーザープリンターで瞳の虹彩のコピーを作る。3Dプリンタで作った顔を顔認証に使うなど、最新技術を活用したなりすましや、それを利用した犯罪も発生してしまっています。
加えて、生体認証システムに登録されている顔や声などのデータが万一流出してしまったら、文字列のパスワードが流出するよりもっと重大な問題を引き起こします。例えば、知らない間に防犯カメラから自分の顔の画像が漏れ、どこかで使われているとしたらゾッとしますよね。そうした時に文字のパスワードと異なり、即座に変更できないのも生体認証のデメリットです。「生体」という決して替えが効かない「鍵」の使用に当たっては、生体認証をする運営側に高度な技術とセキュリティ意識が求められます。
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