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事例でわかるエッジコンピューティング!賢いIoTデバイスが5G普及を加速

2021.8.26

2020年にモバイル通信「5G」が実用化され、スマートフォンだけではなく様々な機器がインターネットにつながり始めています。しかし、5Gへの移行とともにIoTの活用が進むと、クラウドサーバーへの負荷が増大し、これではせっかくの5G通信の恩恵が受けられません。そこで注目されているのが「エッジコンピューティング」という技術です。

例えばいままではクラウドサーバーだけがデータを処理していましたが、エッジコンピューティングではIoTデバイス自体や中継地点に設置されたサーバーと処理を分担することでサーバーの負荷を下げ、より5Gの恩恵を受けることができるようになります。

5G時代に普及が進むエッジコンピューティングについて、事例とともに紹介していきます。

IoTデバイスの普及でデータが“渋滞”?

エッジコンピューティング

最近身の回りにIoTデバイスが急速に増えてきていることを実感しませんか?以前ユピスタでもご紹介しましたが、IoTデバイスには数多くのセンサーが搭載されています。そのセンサーによってリビングや居室で日常の行動ログがデータとして残され、折に触れ活用の機会を待っています。

例えば体重計や血圧計でバイタルデータがログとして蓄積される際には、すべてのデータが一度インターネットを介してサーバーに送られます。IoTによるデータが日常生活に活かされるようになってからはまだ年月が浅いですが、やがてIoTデバイスを活用する生活は多くの人にとって当たり前になるでしょう。そうなれば当然、データの大渋滞が発生する可能性があります。

世界のデータ通信量は、2020年現在でおよそ59ゼタバイトに達するとのこと。1ゼタバイト=10^21(十垓)バイトといってもピンときませんが、2000年の年間データ通信量のなんと1万倍に達する情報量になります。このまま増え続ければさらにデータの大渋滞が起こることになるでしょう。

特に5Gなど通信規格の進化で予想されるのが”リアルタイムデータ”の増加。リアルタイムデータとは、例えば車やドローンなど移動するものを情報として捉える、言わば変化をリアルに捉え続けなければならないデータの事です。2017年の統計では17%程度の比率でしたが、2025年にはやりとりされるデータの約30%がリアルタイムデータとなる予測です。予想されるデータの大渋滞を解決するための技術がいまや必要不可欠となってきました。

5Gの活用に欠かせないエッジコンピューティングって?

エッジコンピューティング

従来の方法では、データは一度クラウドに集積され活用されていました。しかしサーバーの負荷が大きいことや、それぞれの端末とサーバー間の通信時の距離が遠くなるため、データの処理速度が遅いというデメリットがありました。

そこで、増え続けるインターネットデータの大渋滞を解決するため、「エッジコンピューティング」という技術が登場しました。

エッジコンピューティングとは、コンピューターネットワークの縁(エッジ)でデータ処理を行うことから名付けられたネットワーク技術です。エッジコンピューティングでは、デバイス自体、あるいはデバイスに近いエリアにエッジサーバーを配置し、それぞれのサーバーで情報処理を行います。複数のサーバーにデータを分散させて、処理をワークシェアしていくのが、エッジコンピューティングの特徴です。

この方法により、来るべき”データの大渋滞“に備えようというわけです。特に5Gが普及すれば、その通通信速度の恩恵にあずかるリアルタイムデータはますます増加します。今後は、エッジコンピューティングやクラウドコンピューティングのどちらか一方ではなく、それぞれ相互に補完する”いいとこ取り”の複合システムが主流になっていくとみられています。

事例で分かるエッジコンピューティング

エッジコンピューティング

エッジコンピューティングの活用事例として、まず初めに最も期待されている分野はすでにユピスタでご紹介した自動運転です。自動車の走行時は常に周辺状況が変わり、リアルタイムで瞬時にその状況を判断しなければならない場面が多く、データ処理の即時性が求められます。従来のクラウドコンピューティングでは判断の遅れが生じる可能性もあり、また人命にかかわるテクノロジーであるため、エッジコンピューティングは有効です。

次の事例は気象予測です。局地気象予測の分野でも、エッジコンピューティングの活用に向けた取り組みが行われています。“広域”気象予測の場合は、高性能なスーパーコンピューターを用い、地球全体をカバーする全球モデルでシミュレーションする必要がありますが、“局地”気象予測では、エッジコンピューティングによりその地域のみの気象データを分析できます。例えばバスや鉄道などの運行管理や、農業の分野では局地的な気象データで十分なため、活用が試みられています。

もう一つ事例として挙げられるのは、オフィスなどの入退館に利用される顔認証システムです。一般的な顔認証システムは、クラウド側に問い合わせを行う必要があり、通行する人がカメラの前で一旦停止する必要があります。しかしエッジコンピューティングなら高速でデータ処理を行うので、立ち止まらずに歩いたまま顔認証を行うことが可能になりました。

いずれもエッジコンピューティングのおかげでより快適で効率の良いシステムとなっています。新時代をけん引する基幹テクノロジーとして、ますます活用されるでしょう。

エッジコンピューティングによりIoTの普及が加速する

エッジコンピューティングによるデータ処理のワークシェアと高速化によって、5Gを活用したIoTデバイスに囲まれた世界が、ますます身近なものになっていくことでしょう。

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【執筆】ユピスタ編集部
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