イーサネットとは、オフィスや自宅などでネットワークを利用する際に使っている、有線LANなどで用いられる通信規格のこと。イーサネットはすでに50年ほどの歴史をもつ技術です。しかし、そういわれてもどのように私たちの生活を支えて役に立っているのか、今一つピンと来ない方も少なくないのでは。無線LANはケーブルが必要ないので便利ですが、通信の安定性ならやはり有線LANに軍配が上がります。どんなパソコンやLANケーブルでも、インターネットにつなげるのはイーサネットのおかげ。イーサネットとは一体どんなものなのでしょうか。
さらに近年、このイーサネットを採用することで自動車が飛躍的な進化を遂げようとしていることをご存知でしょうか?今回は家庭やオフィス以外の場所で活躍するイーサネットの役割やIoT社会で進化するイーサネット、そして高度情報化社会の今と未来を担う技術として、現代の情報社会を支えるイーサネットの重要性をご紹介します。
イーサネット(Ethernet)とは、主にパソコンなどで信号をやり取りする時に用いられている規格です。高度な情報を授受する際、信号を送る側の規格と受け取る側の規格がバラバラではデータの送受信などととても望めません。
そこでパソコン機器を接続する標準規格として生まれたのが「イーサネット」です。イーサネットは、パソコンをケーブルでインターネット接続する「有線LAN(ローカルエリア接続)」の標準規格として1973年に作られました。主に家庭内やオフィスでパソコンなどを使ったやり取りに用いられています。
どんなケーブルを使うか、どれぐらいの伝送速度か、どのような伝送方式を使うかというルール(プロトコル)が標準化されたおかげで、使うパソコンやケーブルがどこの国で作られたものであってもインターネット接続ができるようになりました。
有線LAN(ローカルエリア接続)に用いられる規格にはトークンや電話線を使うものもありますが、最も普及しているのはイーサネットであり、イーサネット=有線LANケーブルの規格だと考えても差し支えないでしょう。
ちなみに、パソコン機器をケーブルなしでスッキリつなぐのが無線LANです。「Wi-Fi」は、無線LANの規格の一種です。有線・無線とデジタル通信の規格が充実したことで、データ通信の環境は以前とはケタ違いに効率化されました。
光ファイバーを用いた規格では、1秒間に10ギガバイトもの大量の信号を伝送できるなど、イーサネットはケーブルで物理的に接続するため大量のデータを高速で安定的にやり取りできるというメリットがあります。
イーサネットに使用するケーブルは、コネクタが凸の形をしたツイストペアケーブルとも呼ばれるLANケーブルのほか、光ファイバーケーブル、同軸ケーブルの3種類があり、このうちLANケーブル(ツイストペアケーブル)は8本の銅線を2本ずつ4対によりあわせて作られています。さらにこのツイストペアケーブルは、ノイズを防ぐシールド加工がないUTP(Unshielded Twisted Pair)ケーブルと、シールド加工があるSTP(Shielded Twisted Pair)ケーブルの2種類に分類されており、一般的に家庭で使われるのはUTPケーブルです。
イーサネットにおけるそれぞれの規格では、通信速度、使用ケーブルの種類やケーブル規格、伝送距離が規定されています。この規格は伝送速度・伝送方式・ケーブルの順に表記され、例えば「1000BASE-T」なら、「伝送速度は1秒あたり1000Mbps、デジタルデータを変調せずに送信するベースバンド方式、ケーブルの種類はツイストペアケーブル(LANケーブル)を使用」という意味です。
LANケーブルの伝送距離は最長100m程度ですが、光ファイバーを用いた規格10GBASE-ERでは1秒間に10Gbpsもの大量の信号かつ40kmという長距離を伝送することが可能で10Gigabit Ethernetとも呼ばれています。
【イーサネットの代表的な規格】
●Fast Ethernet
Ethernet規格 |
100BASE-TX |
100BASE-FX |
カテゴリ |
cat5 |
シングルモード マルチモード |
ケーブルの種類 |
LAN(UTP/STP) |
光ファイバー |
通信速度 |
100Mbps/秒 |
100Mbps/秒 |
伝送方式 |
ベースバンド方式 |
ベースバンド方式 |
IEEE規格 |
IEEE802.3u |
IEEE802.3u |
最大伝送距離 |
100m |
20km(シングルモード) 2km(マルチモード) |
●Gigabit Ethernet
Ethernet規格 |
1000BASE-T |
1000BASE-LX |
カテゴリ |
cat5e |
シングルモード マルチモード |
ケーブルの種類 |
LAN(UTP/STP) |
光ファイバー |
通信速度 |
1Gbps/秒 |
1Gbps/秒 |
伝送方式 |
ベースバンド方式 |
ベースバンド方式 |
IEEE規格 |
IEEE802.3ab |
IEEE802.3z |
最大伝送距離 |
100m |
5km(シングルモード) 550m(マルチモード) |
●10Gigabit Ethernet
Ethernet規格 |
10GBASE-T |
10GBASE-SR、LR |
カテゴリ |
cat6A |
シングルモード マルチモード |
ケーブルの種類 |
LAN(UTP/STP) |
光ファイバー |
通信速度 |
10Gbps/秒 |
10Gbps/秒 |
伝送方式 |
ベースバンド方式 |
ベースバンド方式 |
IEEE規格 |
IEEE802.3an |
IEEE802.3ae |
最大伝送距離 |
100m |
10km(シングルモード) 300m(マルチモード) |
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最近は家電をはじめとする様々な機器のネットワーク接続にイーサネットが用いられています。例えば、映像と音声を同時にやり取りするHDMIケーブルにはイーサネット対応のものがあります。テレビだけがネットワークにつながっている場合、イーサネット対応のHDMIケーブル(HEC)をBlu-rayレコーダーにつなげば、Blu-rayレコーダーもネットワークに接続させることができます。テレビやレコーダーがHECに対応していることが条件ですが、こうすればLAN接続が1台分で済むので便利ですよね。
また、近年ではオンラインで人とつながって遊ぶゲームや、対戦するeスポーツも人気を集めています。こういったFPS(First-person shooter:一人称視点で戦うゲームのジャンル)などのゲームでは0.1秒を争い、一瞬のタイムラグ(遅延)でも不利になることから、ゲーム機をLANケーブルでイーサネットに接続するとより安心です。
イーサネットの利用場所はオフィスや家庭だけではありません。工場では製造中の製品のデータや機器のエラーなどを送受信するための「産業用イーサネット」が注目されています。産業用イーサネットに求められるのは、工場独特の高温・高湿度・振動などに耐えられるケーブルやコネクタの堅牢性と、何か起きた時にリアルタイムでデータを確実に送受信できる通信の安定性と信頼性です。
このように独自の進化を遂げた産業用イーサネットが、複数のロボットやオペレーション端末をつなぎ、工場におけるIoT化の中心的な役割を担っています。これにより、無駄なコストが発生するのを防ぐことができ、人が入れない場所でも機器の稼働状況を操作・確認できるようになりました。
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将来的にイーサネットの利用拡大が注目されている分野は、自動車に搭載されるコンピュータや通信機器を結ぶ車載イーサネットでしょう。近年、自動車はますます電動化や自動化が進み、様々な自動運転支援機能も採用されています。こうした先進技術を統合し、車への応用を実現させるためには、それらの機器同士をネットワーク接続し、大量のデータを高速でやり取りする必要があります。その手段として注目されているのがイーサネットなのです。
自動車向けに発展したイーサネットを基本的なECU(電子回路を使ったシステム制御装置)だけでなく、高性能カメラやナビ、レーダー、各種センサーやアクチュエータ(電気信号を運動に変換する装置)などに接続すれば膨大な情報がスムーズに送受信できます。
また、将来的には自動運転が社会の常識になるかもしれません。完全な自動運転を実現させるためにはこれまで以上に周囲の状況を確認したり、他の車や外の世界(インフラ)と通信したりすることが必要になってきます。こういった先進技術を車に応用する時も車載イーサネットは活躍するでしょう。車載イーサネットで自動車の販売後にソフトを追加し、機能を更新していくことも可能となります。
モビリティの進化は最も想像力を掻き立て、未来の訪れを最も早く体感できる分野といっても過言ではありません。自動車の高度化・高性能化に伴い、その中枢神経はイーサネットに置き換わり、イーサネットはモビリティの「神経網」として位置付けられるでしょう。
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1973年の誕生以来、長い歴史を重ねたイーサネット規格は、時代遅れになるどころか、今後ますます進化することが期待されています。これまでパソコンを中心に普及してきたイーサネットは、電化製品や工場、街といったIoT社会のあらゆる分野でいっそう活用されるようになり、私たちが快適で安全な生活を送るために貢献してくれるでしょう。
(2021年6月4日新規掲載:2024年11月18日更新)
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ユピテルのドライブレコーダー「Y-410di」 (カー用品量販店モデル)、「SN-TW100di」 (カーディーラー専売モデル)、「Y-410dP」(Web限定モデル)は、リアカメラからフロントカメラへの接続に、イーサネット規格を採用しています。従来機はアナログのピンケーブルを使用し、デジタル信号をアナログ規格にエンコード(変換)して伝送するアナログハイビジョン方式を採用していました。最新のこれらのモデルでは、ネットワークカメラのようにイーサネット規格を採用したことで、デジタル信号をデジタル信号のまま、劣化することなく伝送することが可能になりました。
【執筆】ユピスタ編集部
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