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自動運転実現に必要不可欠なリモートセンシング技術、LiDARとは

2023.11.27

スマホにも搭載されるLiDAR(ライダー:Light Detection And Ranging)は、光を使って距離や形状を認識し計測するセンサーで、レベル5と呼ばれる完全自動運転の実現に不可欠なリモートセンシング技術のひとつです。LiDARの仕組みやその活用について解説します。

注目のリモートセンシング技術「LiDAR」とは―ミリ波レーダーとの違い

「LiDAR」とは、Light、つまり光を使ったセンシング技術です。対象物に近赤外線や紫外線などのレーザー光を当て、はね返ってくる光を収集して対象物までの距離やその形状を測定します。

これと同じような仕組みに「Radar(レーダー:Radio Detecting and Ranging)」があります。ライダーとレーダー、言葉は似ていますが、ライダーが波長の短い「光」を使うのに対し、レーダーはRadioという言葉からも分かるように波長の長い「電波」を利用します。中でも光に近い周波数帯を使う「ミリ波レーダー」は、100mという広範囲内のモノを探知することが可能。電波を使うので天候の影響を受けず、車やドローン、防犯センサーなどに利用されています。

ただし、レーダーというのは対象物までの距離を測定するのは得意ですが、対象物の形状を測定することは苦手です。その点、レーザー光を使うライダーは三次元的に位置関係を把握できるので、より幅広い分野での活用が期待されているのです。LiDARは測定方法によって「TOF(飛行時間)方式」と「FMCW(周波数連続変調)方式」の2種類に分かれますが、現在商用化されているライダーのほとんどはTOF方式で、コストがかかって複雑なFMCW方式はまだ本格的な実用化には至っていません。

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高精度な目として働くLiDARが実現?!夢の完全自動運転への道

リモートセンシング

近年になってLiDARが注目されているのは、夢の完全自動運転の実現に大きく役立つと考えられているためです。車が人の手を借りることなく自動で安全に走行するためには、絶えず周囲の状況を認識し続ける高精度なセンサーが必要不可欠です。これまではミリ波レーダーに高性能なカメラを組み合わせることで、この課題をクリアしようとする研究・開発が進められてきました。

ミリ波レーダー×カメラの組み合わせは、例えば前方を走行する車との距離を把握し、スピードを抑えて車間距離を保つACCシステム(Adaptive Cruise Control)などに活用されています。しかし、ミリ波レーダーは対象物までの距離は測ることができても、それが車なのか人なのかを検知できないという課題があります。さらに、小さい物や反射率の低い物を検知することも苦手です。また、カメラは標識や信号の色を識別できますが、悪天候や逆光に弱いというデメリットがあります。

そこで、ミリ波レーダー、カメラ、LiDARという3つの技術を組み合わせることで、持続的かつ無制限の自動運転を意味するレベル5、つまり完全運転の自動化を実現させようと考えられています。LiDAR、特に高精度なFMCW方式が実用化されれば、車は絶えず路面の状態を確認して、小さな障害物をも検知しながら走行できます。また、広範囲にレーザー光を照射して前後左右の車だけでなく周囲の構造物や歩行者も識別し、まるで人の視覚に代わって働く「目」の役割を果たすことが期待されているのです。

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LiDARはスマホやロボット掃除機にも?広がる活用と今後の課題

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LiDARの活用は自動運転だけにとどまりません。そもそもLiDARは60年代から地質学や気象学での観測に使われてきました。今でも氷河の観察や地殻の測定などに利用されています。現在は高精度な測定ができるという特徴を生かし、飛行機やドローンに搭載して地形調査を行う場合にも活用されています。

また、LiDARは様々なロボットにも搭載されています。産業ロボットはもちろん、私たちがよく目にするレストランの配膳ロボットや、ロボット掃除機にもLiDARは使われていて、ロボットたちの安全な自律走行に役立っています。また、自動ドアや駅のホームドア、さらにはゴルフの距離測定にも使われています。

変わったところでは、AIと組み合わせ、2019年の体操競技で採点に利用されたことも。肉眼では確認できないほどの高難度な技をこなす選手たちの動きを捉え、体の凸凹をレーザーで検知して肘や膝などの角度を認識するわけです。暗くても使えるという特徴を生かしてスマホにも搭載され、オートフォーカスやAR機能などにも利用されています。今後の開発が進むにつれ、さらに多くのデバイスに搭載されるかもしれません。

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しかし、大きな期待が寄せられているLiDARには課題も多く、そのひとつとして挙げられるのがコストです。自動運転を可能にするほど高性能なLiDARには、数百万円の費用がかかるとされています。これを実用化するには低コスト化が必須となるため、LiDARを搭載した自動運転車の登場にはもうしばらくかかりそうです。

市場規模も急拡大!世界中で高まるLiDARへの期待

ある調査によると、2022年に129億円だったLiDARの市場規模は2030年に75倍の9,548億円、2045年にはその4倍の3兆5,375億円に拡大すると予測されています。その頃には夢の完全自動運転が実現しているかもしれませんね。

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【執筆】ユピスタ編集部
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