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ノーベル賞受賞でさらに進化するAI 機械学習のメリットとデメリット

2024.11.25

2024年、AIの生みの親ともいえる2人の研究者がノーベル物理学賞を受賞しました。急速な進化を遂げ、浸透しつつあるAIですが、著作権や倫理面、正確性などの問題点も指摘されています。人間の手に負えなくなる脅威があるとさえいわれるAIを、安全に利用するためにはどうすればいいのでしょうか。初心者向けにおさらいします。

コンピュータが人のように考え判断する!?学習する機械が実体化したAIとは

AIノーベル賞

AI(人工知能:Artificial Intelligence)は、コンピュータがまるで人間のように学習して考え、判断しているような振る舞いをする技術(システム)を指した言葉です。脳の神経細胞(ニューロン)とそれをつなぐシナプス(接続構造)の仕組みを人工的に再現することで、コンピュータに学習させたり記憶させたりすることが可能になりました。

AIの研究は1950年代から始まり、「AIの冬」とも呼ばれる停滞期を何度か乗り越え、2020年以降になって飛躍的な進化を遂げました。その中核となる技術は機械学習とディープラーニングで、先日ノーベル物理学賞を受賞したのは、この機械学習の基礎を開発した二人の科学者です。

AIは特定の分野に特化した「弱いAI」と、複数の分野に対応可能な汎用型の「強いAI」に分けられます。特化型AIはすでに医療、製造業、農業など多くの分野に導入され、業務の効率化や人手不足の解消になくてはならないものとなっています。また、身近なところでは自動車やスマホ、家電などにもAIは搭載されています。ロボット掃除機やスマートスピーカーはもちろん、カーナビなどにも活用されていますね。

近年は学習した情報に基づき、オリジナルコンテンツを作成できる生成AIも注目を集めています。スマホに搭載された生成AIを画像処理や翻訳、文章作成などに活用している人も多いのではないでしょうか。SFの世界に出てくるような汎用型AIの登場はもう少し先になりそうですが、AI自体はすでに身近なものとなっています。

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セキュリティリスクに著作権問題…AI利用にはデメリットも 生成AIの課題

これは「科学の進歩あるある」ですが、AIは私たちの生活を便利なものにしてくれた反面、デメリットや課題も浮上しています。まず、AIにはインターネットを利用する技術だけに、不正アクセス、機密情報漏洩、ハッキングといったサイバー攻撃など、セキュリティに関係するリスクがどうしても付きまといます。

また、AIを使用していて何かトラブルが起きた時、誰が・どの程度責任を負うべきか、法的にはっきりしていない分野もあります。例えば、AIで自動運転を行う車が事故を起こした場合、責任は乗り手側にあるのか、それとも車の作り手側にあるのかというような問題です。

加えて生成AIに関して言えば、すでにAIを使ったいわゆるパクリ作品、ディープフェイクを悪用した動画や画像、倫理的に不適切なコンテンツの作成といったトラブルが起きています。こうしたコンテンツがAIで簡単に作れるようになったことで、扇動や詐欺目的に利用される事案はますます増えていくでしょう。

著作権に伴うトラブルも考えられます。ネット上に公開した自作品が機械学習の「教材」にされることを嫌い、「AI学習禁止」と注意書きを入れたり設定を変えたり、アカウントを削除してしまうクリエイターもいます。しかし、今のところ情報解析のための「AI学習」は法的に禁止されていません。すべての人がAIを気持ち良く利用していくためには、将来的に何らかのルールを作る必要に迫られるかもしれません。

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AIをもっと安全で便利に AIを活用する人間が気をつけるべきリテラシー

AIノーベル賞

AIは今後も進化し続け、活用の範囲も広がっていくでしょう。そこで、AIを安全に利用するため、まずは自分・自社に最適なAIを正しく選定すること、さらには用途を限定することがすすめられています。

例えばAIが利用する情報をコントロールするシステム(RAG)が利用できるかもしれません。自社が所有・保管しているデータなど、独自のデータベースから得た情報がプラスされるため、より正確で最適化された回答を得ることができます。また、セキュリティ面では無料のオンラインAIより、エンタープライズ版などを選択したほうが安全です。

マニュアル作りや定期的な活用方法の見直し、さらには社員研修の実施などにより、正しい利用方法を学ぶことも大切。また、個人的にAIを使用する時も回答を鵜呑みにしない、出力されたコンテンツをそのまま転用しない、個人情報を入力しないといった点に気をつけましょう。生成AIについては当分の間、人間の手による確認と修正を行うこと、そしてファクトチェックが必要不可欠です。

AIによるフェイク情報を識別する技術は日々進歩していますし、法的な枠組み作りも今後はさらに進むと思われます。しかし、一番大切なのは私たちひとりひとりのAI活用リテラシーです。AIが持つ課題を知ったうえで、上手に活用していきたいものです。

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今や生活に不可欠のAI−うまく付き合うことで快適な暮らしを実現

AIのメリット・デメリットを知ることで、人とテクノロジーの付き合い方を改めて考えることができます。AIが生活や社会を便利にしてくれることは間違いありませんが、それも私たちの使い方次第。より良い暮らしのためにAIの正しい使い方を学ぶことは必要不可欠なのです。

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【執筆】ユピスタ編集部
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