近年、宇宙開発はより小規模に、より身近なものになりつつあります。その研究はもはや国や大企業のものだけではありません。ベンチャー企業やスタートアップ、さらには多くの新興国が続々と宇宙ビジネスに名乗りを上げるようになりました。その背後にはどんな理由があるのでしょうか。そして、ビジネスとは違うフィールドで宇宙への挑戦を続けている人たちもいます。人類の夢を乗せた宇宙開発の現状をお伝えします。
ロケット打ち上げをライブ配信!宇宙開発もベンチャーな時代に
宇宙開発ベンチャーも参入!ロケット打ち上げが盛んに
昨年、アメリカの民間会社が打ち上げたロケットに、人気SFドラマのシリーズで「船長」役を演じた俳優が搭乗。10分あまりのリアルな宇宙旅行を経験して話題になりました。日本でも、民間人初のISS(国際宇宙ステーション)滞在が注目を集めたのは記憶に新しいところです。ひと昔前は、宇宙開発と言えば、大国が莫大な予算をつぎ込み、国の威信をかけて行うものというイメージがありました。しかし「民」による宇宙進出は、もう目新しいものではなくなりつつあります。
ここでいう「民」は、潤沢な資金を持つ大手企業だけではありません。世界には約1000社の宇宙ベンチャーがあると言われていますが、日本でも宇宙ベンチャーはここ数年で急激に増加しました。スペースデブリ(宇宙ごみ)対策、宇宙食や遠隔操作ロボットの開発、衛星データの利用など、分野は異なりますが、国内では約50社の宇宙ベンチャー企業がしのぎを削っています。
こうした流れができたひとつのきっかけは、政府の後押しでした。2016年に「宇宙活動法」と「リモートセンシング法」が成立し、2017年には「宇宙産業ビジョン2030」が策定。宇宙開発は軍事利用と結びつきがちだったため、民間企業とはなじみにくいというイメージがありましたが、宇宙ビジネスは日本の経済成長を推進させる産業であることが明確に位置づけられたのです。
また、ロケット打ち上げに関連する研究費や機器類が低コスト化。宇宙ビジネスは小さな民間企業にも十分「元が取れる」ものとなり、このようなことが一気に宇宙ベンチャーを増加させたと考えられます。
世界中で進む宇宙開発。新興国も次々にロケット打ち上げ
いわゆる新興国においても、宇宙ビジネスは広がりを見せています。打ち上げたロケットから得られるデータは、新興国の成長にとって非常に価値のあるものであり、例えばインフラが整っていない国にとって衛星データから得られる情報は、都市情報の整理に役立ちます。
インドは火星の鉱物資源に着目し、探査機を火星周回軌道へ乗せることにアジアで初めて成功しました。同国は国産ロケットで月探査機の月周回軌道への投入も成功させています。産油国であるアラブ首長国連邦(UAE)では「宇宙庁」を創設。やはり将来的なエネルギー需要を見越して、火星探査を計画しています。将来、火星にコロニーをつくるという大プロジェクトも。以前にもユピスタでご紹介しましたが、火星の資源を使って、3Dプリンターでロケットを作り上げる構想なども既に出ています。
なお中国はすでに有人ロケットの打ち上げに成功しており、宇宙ステーションを独自に持つことを計画。2022年頃には宇宙ステーションユニットを打ち上げる予定です。アメリカの大手投資銀行の予測によると、世界における宇宙産業の市場規模は、2019年に約41.7兆円だったものが、2040年には120兆円(1兆530億ドル)に拡大するとか。「お金になる」宇宙開発は新興国にとって大きなチャンス。ソフトやハードの設計・開発費も低コスト化が進み、発展途上の国々でも手が届くようになったことで、今後はますます多くの国がこの分野に参入していくと考えられます。
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このように宇宙ビジネスが過熱する一方、それとは少し離れたところで、宇宙への挑戦を続けている人たちもいます。例えば、「趣味」で小型の人工衛星を打ち上げた社会人サークルがあります。これは宇宙開発に携わっていないサラリーマンや学生を中心としたグループで、現在の所属メンバーは約180人。クラウドファンディングなどで資金を調達しつつ、「サラリーマンの、サラリーマンによる、サラリーマンのための民間宇宙開発」というメッセージを発信しました。現在、2024年に打ち上げる4機目となる人工衛星の開発をスタートしています。
また、鹿児島大学には「鹿児島ハイブリッドロケット研究会(Team KROX) 」があります。30人ほどのグループながら、設計から打ち上げまで地元で行っているのが特徴で、技術と地域の発展を目指しています。同研究会には、鹿児島に関連会社を持つユピテルも協力しており、3月16日には鹿児島県 肝付町で「鹿児島ロケット3号機 ユピテル号 」の打ち上げ実験を実施。ユピテルのドライブレコーダーが搭載されたこのロケットの打ち上げの模様はYouTubeでライブ配信され、数百人が打ち上げを見守りました。
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