デジタル技術により人々の生活をより良いものにするデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みは、いろいろな所で加速しています。今回は、皆さんも利用する機会の多い宅配便で進行するDXについてご紹介します!宅配便業界において「再配達」は重要な課題のひとつ。その対策として期待される「スマート宅配」が今注目されているんです。
宅配ボックスもDXを推進中!今注目の「スマート宅配」とは?
宅配業界の課題、月間30万個の再配達
宅配サービスは、今や私たちの生活に欠かせないサービスですね。特に車を持たない人や高齢者にとって、重いものや大きなものを玄関まで持ってきてくれる宅配は、本当にありがたいもの。昨今ではコロナ禍の影響も大きく、ECサイトのニーズは拡大し、宅配便の利用が急増しています。国土交通省によると、2017年度に42億個だった宅配便の取扱数は、2022年度には48億個を超えるまでに増加しているんです。
しかし、宅配の取り扱い数が増える一方で、課題も浮上しています。中でも大きいのは「再配達」の問題。月間の再配達個数は30万個とも言われています。ただでさえ人手不足×仕事量が急増中のこの業界で、1個の荷物を配達するために同じ場所へ繰り返し向かうことは、大きな負担となっています。2015年に国土交通省が宅配便の再配達に関するレポートを発表しましたが、それによると、再配達にかかる社会的損失は「年間約1.8億時間・約9万人分の労働力」に相当するとのこと。また、それによって配達のトラックから排出される余分なCO2の量は年約42万トンにのぼります。再配達は、人にも環境にも良くないわけです。近年、再配達の割合は、コロナ禍で在宅者が増えたことで減少したとはいえ、それでも再配達率は10〜15%前後を推移しており、10個に1個は再配達されているのが現状です。この状況を改善するため、様々なアイデアが考案されてきました。そのひとつが「置き配」です。
「置き配」で露呈した新たなリスク
「置き配」とは、あらかじめ指定した場所に荷物を置いて帰ってもらう配達方法です。すでに利用したことがある人もいるのではないでしょうか?荷物を玄関先に直接置いてもらう場合もあれば、専用の宅配ボックスを用意する人もいます。共同住宅では、共有の宅配ボックスが設置されることもあります。住人の在宅・留守に関係なく、とにかく荷物を届けることができるので、業者さんにとってはありがたいシステムです。また、人と直接会うことに抵抗がある人や、来客があった時にすぐ対応できない人にも便利です。
ただし、置き配にはデメリットもあります。まずは置いてもらう場所をよく考えないと、届けられた荷物が汚れたり、雨に濡れたりする可能性があります。また、盗難被害に遭う可能性や、荷物があることで不在だということが分かってしまうので、空き巣被害に遭う危険もあります。実際、「置き配」された家を狙った窃盗事件も起きています。さらに、対面で渡されたらすぐ気づけるような「誤配」も、置き配だと帰宅するまで気づけません。家の周囲に置かれた荷物を近所の人に見られるのがイヤと言う人もいます。また、専用の宅配ボックスを置いたとしても、一度に複数の荷物を受け取ることはできませんし、集合住宅などの共有宅配ボックスではすぐいっぱいになってしまって受け取れないといった問題も。
こうした課題に対しては、セキュリティのしっかりした宅配ボックスを使う、盗難保険の付いた置き配サービスを利用するなどの方法もありますが、加えて最近注目されているのが、「置き配」×「インターネット」のスマート宅配、IoT宅配です。
注目のスマート宅配とは?複数の宅配ロッカーが IoT でつながる
便利ではあるものの心配な点もある「置き配」ですが、インターネットと組み合わせることで利便性・安全性はぐっと向上します。例えば、ある宅配ボックスには自社開発された専用アプリが対応しており、自分宛ての荷物が宅配ボックスに入れられるとアプリでお知らせしてくれます。アプリで荷物の状況がわかるので誤配や長時間の放置を避けることができます。
またIoTの活用により、宅配ボックス自体がインターネットと繋がっているものも登場しました。商品が発送されると宅配ボックスに荷物の追跡番号を送信。宅配に来た配達業者は宅配ボックスを開錠するために、あらかじめ送られた追跡番号を読み取って開錠します。さらに、宅配ボックス内のカメラが荷物を自動撮影し写真を送信してお知らせしてくれます。また、専用アプリによる遠隔操作で鍵の開閉ができる宅配ボックスも登場しており、一度に複数の荷物が受け取れるほか、よりセキュリティ性も高くなっています。共同住宅の場合では、宅配事業者と提携し専用の宅配ロッカーを各階に設置しているケースも。各階の宅配ロッカーをネットワークで接続して全ての階の利用状況をリアルタイムで把握することで、宛先の階の宅配ロッカーが仮にいっぱいで使えなくても、空いている他の階の宅配ロッカーを利用して配達するなど、再配達の無駄を防いでいます。
こうしたスマート宅配は確実に成果をあげており、東京都で行われたある実験では、IoT宅配ボックスの設置により、再配達率が41%から15%まで減少したというデータもあります。今後IoT宅配ボックスの普及により、再配達の問題が大きく改善されることが期待されています。スマート宅配のようにIoTで都市のDX推進を図る試みは、加速し始めているのです。
☆あわせて読みたい
・LPWA(低消費電力広域ネットワーク)って何?活用が広がるその用途とは
・日常に溶け込んだQRコード。1次元から2次元へ進化した、バーコードの未来とは
・位置情報が未来を救う? 人やモノを追うGPSで「DX推進」に何が起きるか
DXによる課題解決が世の中をもっと豊かに!
宅配便業界が抱えている再配達や置き配の問題は、DXにより解決が期待されています。同じように現在、様々な分野でテクノロジーによる課題解決が検討されています。皆さんの身の回りでもインターネットなどのテクノロジーを利用すれば解決できそうな問題はありませんか?そんな風に考えてみると、身近なところでもDXを感じられるかもしれませんね。
☆あわせて読みたい
・DXによるビジネスの新たな局面 スマートファクトリーとIoTが拓く産業革命
・街中のビルが太陽電池に! 再生可能エネルギーが創るスマートシティ
-
SOCIAL
LPWA(低消費電力広域ネットワーク)って何?活用が広がるその用途とは
テレビやエアコン、照明や鍵…身の回りの様々な機器がインターネットに接続される、IoT(モノのインター...
TECHNOLOGY