車を運転するときには制限速度を順守することが当然求められます。そこでスピード超過を取り締まるために道路上や道路脇に設置されているのが「オービス」です。オービスは日本に導入されてから約50年の間に大きく進化してきました。今回はオービスの進化の歴史と、道路の安全を守るためのさまざまな仕組みについて説明します。
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車を運転するときには制限速度を順守することが当然求められます。そこでスピード超過を取り締まるために道路上や道路脇に設置されているのが「オービス」です。オービスは日本に導入されてから約50年の間に大きく進化してきました。今回はオービスの進化の歴史と、道路の安全を守るためのさまざまな仕組みについて説明します。
オービスとは、車の速度違反を自動的にチェックする24時間稼働システムで、日本には1973年に導入されました。正式名称は「速度違反自動取締装置」です。
オービスにはいくつかの種類がありますが、いずれもスピード違反をしている車両が付近を通過すると、ナンバープレートと運転者を瞬時に撮影します。撮影した画像は管轄の警察署に収集され、その後、車両の所有者へ通知書が郵送される仕組みとなっています。通知書には速度違反をした場所、出頭する日時や場所などが記載されています。
オービスは主に速度が出やすい直線道路に設置されており、その手前にはオービスがあることを示す看板や標識が設けられていることが多いようです。ちなみに「オービス(ORBIS)」は「目」を意味するラテン語に由来する言葉で、通過する車が速度を守っているかどうか、その目でしっかり見張っているわけです。
オービスが日本に導入されて50年以上になりますが、その間にさまざまな形式の装置が開発され、進化してきました。古いものから順に紹介していきましょう。
・レーダー式
レーダー式はもっとも古くからあるタイプです。道路上部に設置され、走行車にレーダーを照射して速度を計測し、速度超過を感知すると路肩のカメラで撮影します。
古いレーダー式オービスの中には、カメラがフィルム式からデジタル式に交換されたものもありますが、機能しなくなったにもかかわらず撤去されずに残っているものも多いようです。その理由として撤去費用がかかることが挙げられますが、速度超過の抑止効果を維持する「ダミー」としての役割も期待されているのかもしれません。
・ループコイル式
ループコイル式も古くからある形式のひとつで、磁場を発生させる3組のループコイルが道路脇に等間隔に埋め込まれています。それぞれのループコイルが通過車両の金属を感知し、1番目から3番目に至るまでの時間からスピードを測定します。老朽化したものはデジタル化した新型機へと置き換えられています。
・Hシステム
1992年に登場したHシステムは、道路上部のレーダーで速度を計測し、別に設置された小型赤外線ストロボとデジタルカメラで違反車両を撮影します。撮影されたデータは直ちに管轄の警察署に送信されます。ちなみに「H」というネーミングは、阪神高速道路に多く設置されたことに由来しているそうです。
・LHシステム
LHシステムは1994年から導入が開始されました。前述のループコイル式(L)とHシステムを組み合わせた形式で、道路に埋め込まれたループコイルで速度を計測し、道路上部のデジタルカメラで撮影します。なお、現在オービスの主流となっているのはHシステムとLHシステムです。
・レーザー式
レーダー式オービスが電波を利用するのに対し、レーザー式オービスで利用するのは光で、路肩に設置されたレーザースキャンセンサーで速度を計測します。装置がコンパクトで、半固定式のものと移動式のものがあります。
・移動式(可搬式)
オービスは基本的に道路の脇あるいは上部に固定されていますが、持ち運び可能な移動式オービスの普及も進んでいます。道路脇に駐停車させたワンボックスカーに速度計測器とカメラを搭載しているタイプや、人が持ち運べるほどの小さな機器を三脚に乗せて道路脇に設置するタイプなどがあります。固定式オービスと同じく写真を撮影して通知書を送付するシステムなので、いわゆる「ネズミ捕り」のように車を呼びとめる必要がありません。
移動式オービスの主流はレーザー式で、そのほか新Kバンドといわれる周波数帯を使用して速度を計測するレーダー式もあります。また、最近は「光電管方式」の移動式オービスも登場しています。
スピード監視システムがあるのは、もちろん日本だけではありません。海外ではどのような「目」が車を見張っているのでしょうか。
イギリスで使用されている代表的なシステムのひとつ「SPECS(平均速度取締システム)」は、複数のカメラを設置し、その区間の通過時間から平均速度を検出します。路面に描かれた四角い「ダッシュ」で速度違反を証明する場合もあります。なお、イギリスのスピードカメラはすべて黄色く塗ることが法律で義務づけられているそうです。
スウェーデンのSensys Gatso Group製「SENSYS SSS」は、1基で複数車線・複数車両を計測でき、さらにスピード違反車を検知すると歩行者に音で注意を促す機能も搭載しています。「SENSYS SSS」は日本に初めて導入された外国製オービスで、現在、埼玉県や岐阜県などに設置されています。
オーストラリアは、スピード違反をはじめ交通違反の取り締まりが特に厳しいといわれています。「Redflex Halo」は、AI技術を活用して速度違反をリアルタイムで検知し通報するシステムで、最大6車線を監視し、信号無視や車線逸脱なども検出します。またドイツの「Traffic Star S350」はレーザー技術を活用して複数車線を同時に監視し、スピード違反だけでなく信号無視や車線変更違反も検知します。
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スピード違反に加え、近年問題になっているのがあおり運転です。厳罰化が進んでいるものの被害は後を絶たず、2024年に実施された調査では「あおり運転を受けたことがある」と回答した人の数が過去最多となり、ドライバーの約4人に1人が「直近半年の間にあおられた経験がある」と答えています。
現状、オービスでは後続車は撮影されないため、「あおり運転から逃げようとして加速したらスピード違反になった」といった事情は考慮されにくいでしょう。一方で「オービスの手前で速度を落としたら後続車からあおられた」といった事例もあるようです。今後の新しいオービスには、あおり運転の抑制につながる機能の搭載が期待されています。
ヨーロッパでは、2024年からすべての新規登録車に「ISA(自動速度制御装置)」の装着が義務づけられました。ISAは車載カメラやGPSを用いて制限速度を認識し、リアルタイムで表示するほか、自動的にエンジン出力を下げるなどしてスピードを制御する機能を備えています。
日本での導入はまだ先になりそうですが、こうしたルールができればスピード違反は大幅に減らせるでしょう。スピードを上げた無理な追い抜きなども少なくなり、あおり運転の抑制にもつながりそうです。そうなれば、もうオービスは不要になるかもしれません。
もしスピード違反でオービスを光らせてしまうとどうなるのでしょうか。まず、数日〜1か月後に車の所有者あてに警察署への出頭通知書が届きます。その後、反則金の支払いなどの行政処分が行われ、裁判所での略式手続きによって刑事処分を受ける可能性もあります。
スピード違反は超過速度に応じて罰金(反則金)と違反点数が決まっており、累積6点になると免許停止処分が課せられます。なお、一般道路で30kmオーバー、高速道路で40kmオーバーとなれば一度に6点が加算されます。
いうまでもなく、定められた速度を大きく超過すれば、そのぶん重大事故につながる危険性は高くなります。スピード違反に対する処分は道路の安全を守り、事故を防ぐためにあるのです。大手損害保険会社が実施した調査によると、スピード違反をして交通事故を起こしたときの死亡事故率は、スピード違反をしていない交通事故の9倍以上にもなることがわかっています。オービスを「脅威」と捉えるのではなく、私たちの命を守ってくれる心強い「味方」と考えたいものです。
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どんなに気をつけていても、体調不良や一瞬の「うっかり」は誰にでも起こり得ます。そこで役立つのが、オービスを受信して事前に警報・警告を発してくれる車載デバイスです。
ユピテルの最新レーザー&レーダー探知機「SUPER CAT」シリーズは、「JMA-520」「JMA-401」「MSSS」「LSM」の可搬式取締機に完全対応。業界最高水準の受信感度はそのままに、警報精度を高めました。正確無比な「フィルタリング」機能で特定車両や自動販売機による誤警報も85%カット。さらに加スピードの出しすぎを警告したり、逆走しそうなポイントなど、特に注意して運転するべき場所を通知したりする機能もあります。
またあおり運転については、夜間でもナンバーや標識をくっきり記録できる高精細なドライブレコーダーがあれば、いざというときの重要な証拠になります。ユピテルの安全運転サポート「ADAS」がついたドライブレコーダーは、後方との車間距離が狭くなると「異常接近記録・警告機能」が発動するほか、車線のはみだしや蛇行運転を知らせてくれるといった機能も充実しています。
どのようなデバイスを搭載していてもすべてのオービスを探知できるわけではなく、完全に事故を防げるわけでもありませんが、こうした便利な車載デバイスを活用しつつ、交通ルールを守ってドライブを楽しみたいものです。
・レーザー&レーダー探知機/レーダー探知機 量販店取扱いモデル
・レーザー&レーダー探知機 YPK-21T
・レーザー&レーダー探知機 YPK-21L
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スピード違反は重大な事故につながりかねない危険な行為です。また、あおり運転のリスクや罰金、違反点数についても正しい知識を身につけておくことが大切です。なによりドライバーの責任として体調管理に努め、無理のない移動計画を立て、これからも安全運転を心がけましょう。
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(2021年4月7日新規掲載:2025年3月17日更新)
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