ある国の携帯電話にはメッカの方角を特定できるようにコンパスが組み込まれていたり、日本の携帯電話には非接触支払い機能が搭載されていたり。このように、文化はテクノロジーに影響を与え、テクノロジーもまた文化を創造し、そうすることで共に活性化してきました。
では、日本文化の影響を受けて独自の進化を遂げたテクノロジーにはどんなものがあるのでしょうか。また、テクノロジーが生み出した新たな文化とは?密接な繋がりを持つテクノロジーと文化の関係を考えます。
文化的な影響を受けて独自の進化を遂げる、テクノロジーとカルチャーの関係性
フェリカにコミュニケーションロボット…日本のカルチャーが生んだテクノロジー
日本の文化は様々な独自のテクノロジーを生み出してきました。いわゆる「ガラケー」はその代表と言えるでしょう。
ガラパゴス諸島に隔離されて独自の進化を遂げた動物たちのように、日本の携帯電話はテレビが見られるワンセグに始まり、Felicaを搭載したおサイフケータイ機能、高性能カメラ、指紋認証、赤外線通信にBluetoothなどなど、海外ではお目にかかれない多機能なものへと進化してきました。
携帯電話だけではありません。空気清浄機+ミスト機能が搭載されたエアコン。便座が温まることはもちろん、温風が吹き出し、さらにフタが自動で開閉するトイレ。1台でご飯が炊けて煮込み料理も焼き魚も作ることができる調理家電。こうした「かゆいところに手が届く」多機能家電が日本の日常生活には当たり前のように存在しています。「大は小を兼ねる」と言いますが、同じ値段ならアレもコレもできたほうがお得とばかりに、日本ではさまざまな機能を盛り込んだ家電が人気を博しています。
他にも、しゃべる家電や、コミュニケーションができる癒し目的のロボットが多いのも日本ならでは。これにはロボットが活躍するアニメや漫画の影響があるとも考えられています。こうした機能を兼ね備えた製品たちは日本の優れた技術力・商品開発力の証明であるとも言えるでしょう。
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サブカル×テクノロジー=?最新の技術が生み出した日本発のカルチャー
日本の文化が日本独自のテクノロジーを育てた一方で、テクノロジーによって生まれた新しい文化もあります。最先端の技術を駆使したエンターテイメントはそのひとつです。
例えば、バーチャルキャラクターがインターネット配信を行う、YouTuberならぬVTuberは日本発祥の新しい文化です。
日本ではSNSの投稿が大抵匿名で、いわゆる「顔出しNG」というのが一般的ですが、そこにVRやデジタルヒューマンの技術が結び付き、アニメ風のキャラクターが合成音声で動画配信を行うVTuberが誕生しました。海外発のVTuberも登場していますが、日本のVTuber人気はケタ違い。1年で2億円近くを稼ぐVTuberも現れています。最近ではこれらバーチャルキャラクターが画面を飛び出し、リアルの劇場でVR(バーチャルリアリティ=仮想現実)やAR(アグメンティッドリアリティ=拡張現実)を駆使したショーを展開。
サブカルにとどまらない巨大な新しいエンターテインメントの形を創り上げています。
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デジタルアートもテクノロジーがもたらした新しい文化と言えるでしょう。デジタルアートの先駆けと言われる日本のあるアーティスト集団は、プロジェクションマッピングを使った作品で知られています。時に東洋的思想が込められた彼らの作品には、職人ならではのこだわりが詰め込まれており、海外でも絶賛されています。さらに、アーティストの作品を3DCG化したり、来場者にNFT(ノンファンジブルトークン=鑑定証明付きのデジタルデータ)を配布したりするイベントも頻繁に開催されるようになりました。
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アイヌ語をAIが保存?最新テクノロジーに守られる日本の伝統文化
一方、最新テクノロジーを活用して日本の古い文化を守り、普及させようという試みも始まりました。総務省の「地域文化デジタル事業」では、地域のお祭りやお年寄りが話す昔話、歴史的な建築物などを記録し、利活用の幅を広げようとしています。国立劇場では、劇場や演目の3Dビュー+VR映像を撮影し、自宅で楽しめる劇場体験を提供しています。
職人たちによる匠の技をデジタルの力で伝承する方法も研究されています。ある大学では、陶芸家に3Dモーションキャプチャーを装着してもらい、その動きを計測してCGを作成しました。職人技をテクノロジーで「見える化」し、無形の文化を守ろうという試みです。
古い「ことば」を保護する取り組みも行われています。例えば、消滅の危機にあるアイヌ語をAIに学習させて保存しようという研究です。
この研究で使用されているAIは、アイヌ語を自動認識するだけでなく、音声合成することも可能なのだとか。アイヌ語を聞き分けて高精度で文字化するシステムも開発されました。
さらには古いくずし文字をAIに認識させ、解読する技術も開発されています。スマホに搭載されたあるAIは、くずし文字を撮影するだけで現代の文字に変換してくれます。
最新テクノロジーは新たなカルチャーを生み出すだけでなく、古い日本の文化を守り、継承していくうえでも活躍しているのです。
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相互に影響し合うカルチャーとテクノロジーが、次に生み出す未知の世界
カルチャーが新しいテクノロジーを生み、テクノロジーが新しいカルチャーを作り、そしてテクノロジーがカルチャーを守ってきました。価値観が多様化している現代、今後も生み出されるであろう、新しいテクノロジーと新しいカルチャーに注目です。
※「FeliCa」は、ソニーグループ株式会社またはその関連会社の登録商標または商標です。
※『おサイフケータイ』は、株式会社NTTドコモの商標または登録商標です。
※Bluetooth®ワードマークおよびロゴは登録商標であり、Bluetooth SIG, Inc. が所有権を有します。
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