様々なサービスのオンライン化が普及するにつれて整備が進む電子契約。銀行口座を開設する時もハンコレス・ペーパーレス、住宅ローンの手続きにも電子契約が導入されつつあります。電子契約を採用する企業が増える中、電子署名や電子サインなどの電子契約にまつわる基本を解説します。
ハンコレスとペーパーレス ニューノーマルで定着する電子署名や電子契約とは
書面契約から電子契約へ DXでハンコレス・ペーパーレスを進めるメリット
電子契約とは、紙の契約書ではなく、電子文書をインターネットでやり取りして行う契約のことです。働き方改革やコロナ禍でDX(デジタルトランスフォーメーション)やリモートワークが普及し、近年では多くの企業が電子契約を導入するようになりました。2021年にはデジタル改革関連法が施行され、今までは書面でなければ行えなかった分野の契約も変化しつつあり、電子契約は今後さらに広がっていくと考えられています。
電子契約には多くのメリットがあります。まずは契約成立までの時間を書面契約に比べて大幅に短縮できること。契約書を印刷して郵送・返送する、あるいは相手方へ持参していると契約成立まで何日も、時には何週間もかかるものです。しかし、インターネットでデータをやり取りすれば数分で契約を締結することが可能です。これにより、契約に伴う印刷や交通費などのコストがカットできて印紙税も不要。さらにそれらのデータを適切に管理すれば、書類の紛失や情報漏洩のリスクも減らせます。
ただ、そうは言っても日本はハンコ文化。やっぱり大事な契約は紙じゃないと…と考える人も少なくありません。手書きの署名や押印がない契約書に抵抗を感じる人も多いことでしょう。では、目の前で署名や押印をもらえるわけでもなく、しかも簡単に複製が作れてしまうかもしれない電子契約で、その契約が間違いなく本人によるものということをどのように担保するのでしょうか。
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電子契約に必須の電子署名・タイムスタンプ 電子サイン・電子印鑑との違い
PDFなどで送付された電子契約書に電子署名をすることは簡単です。方法としてはキーボードで名前を入力する、指やスタイラスペンで画面に直接記入する、または画像として保存していたサインを挿入する等があります。しかし、これだけでは法的に有効な、例えば裁判の時に証拠として提出できる契約書にはなりません。
書面契約の場合でも、確かに契約者が本人であることを証明するために、免許証のコピーや印鑑登録証明書、時には戸籍謄本などを添付するものです。電子契約では、第三者機関の電子認証局が発行した「電子証明書」が、免許証や印鑑登録証明書に代わるものとして本人確認の役割を担います。
さらには時刻認証局(タイムスタンプ局)が発行する「文書の指紋に相当するハッシュ値の情報が含まれたタイムスタンプ」を付与することで、その契約書がいつ作成されたのかを正確に記録し、その後で改ざんされていないことを証明することができます。ハッシュ値とは、ハッシュ関数というアルゴリズムを使って求められる固定の桁数の値のことです。元のデータが少しでも変わっていたらこのハッシュ値は全く違うものになるため、ハッシュ値が同じであれば正しいデータであることを担保できるというわけです。
つまり、法的に有効な電子契約を締結する際は、電子署名を行う時に「電子証明書」と「タイムスタンプ」を付与する必要があるということです。
電子署名と似た言葉に「電子サイン」がありますが、電子サインは通常の取引で行われる署名・押印という一連のプロセスを指します。また「電子印鑑」という言葉もありますが、電子印鑑はスキャナーやイラスト編集アプリ等で作成できる印影の画像データであり、基本的に本人証明の機能はなく、たいていは「認印」の代わりに使用されます。
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このようにメリットの多い電子契約ですが、契約にあたっては細心の注意が必要です。電子契約に直筆のサインやハンコは不要ですが、前述の電子証明書が付与された電子署名とタイムスタンプを併用しましょう。電子証明書の発行には1週間〜1か月かかるので、契約前に認証局に申請しておき、署名時に付与します。また、電子証明書には有効期限があるので、定期的に更新して最新のものかどうかを確認することも必要です。
契約データの保存方法も重要です。電子契約には最低7年の保存義務がありますが、「電子帳簿保存法10条」では、保存にあたって訂正・削除ができないこと、検索機能が確保されていること、見読可能装置を備え付けること等々の要件があります。データを単にPDFとしてクラウドに保存したり、プリントアウトして紙の状態で保存したりするのではなく、上記の要件を満たしたシステムで保存することが非常に重要です。
加えて、すべての契約が電子契約で行えるわけではありません。消費者などの弱者を保護するため、またトラブルを防止する目的で、書面でなければ行えない契約もあるので確認が必要です。
さらに、既存の電子契約サービスを利用すれば、よりスムーズに電子契約を行えますが、利用する前には複数のサービスを比較しましょう。無料のお試しサービスなどを活用して自社に最も適したものを選ぶことで、よりスムーズに電子契約を導入することができます。
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メリット・デメリットを把握することでより安全・安心の電子契約導入へ
現在、すでに7割以上の企業が何らかの電子契約を導入しているというデータもあり、電子契約は確実に定着しつつあるようです。社内フローを変えるには時間がかかるものですが、電子契約には多くのメリットがあります。メリットとデメリットを把握し、自社に合った利用方法を取り入れることで、より安心・安全な取引を行うことができます。
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