近年増加しているゲリラ豪雨による冠水や浸水。電気自動車はその性質から、水に弱いのではという気がしますよね。道路が冠水したら車はどんな被害を受けるのでしょうか。いま、街中に複数のセンサーを設置し、浸水状況をリアルタイムで把握するための実証実験が進んでいます。新しい水害リスク対策とともに、一人ひとりの車保有者が浸水対策としてできることについてまとめます。
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近年増加しているゲリラ豪雨による冠水や浸水。電気自動車はその性質から、水に弱いのではという気がしますよね。道路が冠水したら車はどんな被害を受けるのでしょうか。いま、街中に複数のセンサーを設置し、浸水状況をリアルタイムで把握するための実証実験が進んでいます。新しい水害リスク対策とともに、一人ひとりの車保有者が浸水対策としてできることについてまとめます。
近年、さまざまな自然災害が以前より頻繁に起きるようになり、しかも激甚化してその被害は年々大きくなってきています。台風やゲリラ豪雨による水害もその一つ。気象庁によると、30年前に比べて時間雨量50ミリ以上の大雨年間発生回数は大きく増加しており、洪水発生確率の増加も懸念されています。
50ミリというと5センチですから、それほどたいしたことがないような雨量に思えるかもしれません。でもこれは1平方メートルあたりにすると50リットルの雨量ということ。広げた傘の上に1時間で牛乳パック50本分(50キロ)の雨が落ちてくるようなものです。このような大量の雨が一気に降ると道路の排水処理能力は追いつかず、あっという間にあちこちが冠水してしまいます。バイパスや高架下のアンダーパスや地下道が冠水し、立ち往生して浸水してしまった自動車の映像をニュースなどでも目にしますよね。
こうした被害を避けるため、自分が住んでいる地域のハザードマップや道路情報※を確認し、冠水・浸水しやすい場所を知っておきたいものです。よく走行するルートや駐車する場所の水害リスクを事前に確認しておくと、早めに車を移動するなどの対応ができるかもしれません。
※参考:「関東甲信地域における道路冠水注意箇所マップ」(国土交通省関東地方整備局)
それでももし冠水で立ち往生してしまったら、少しでも早くドアや窓を開けて脱出します。自動車が耐えられる水深は、タイヤの半分までの高さといわれており、それ以上になるとドアが水圧で開かなくなります。万一に備え、窓を割る緊急脱出用ハンマーなどを車内のすぐ手の届く場所に置いておきましょう。
「電気自動車やハイブリッド車は水に弱い」「電気自動車は浸水すると感電する」などという噂もありますが本当でしょうか。確かに高電圧のバッテリーを積み、コンピュータ制御されたマシンと聞けば水に弱そうなイメージがあるので、電気自動車やハイブリッド車のオーナーは不安に感じるかもしれません。
しかし、結論から言うとこれは誤解。電気自動車には高電圧のバッテリーとともに高精度のブレーカーが搭載されており、浸水でショートしたとたん、ブレーカーが回路を自動的にシャットダウンします。車体と高電圧のバッテリーは完全に切り離されるため、水没している電気自動車に触っても、感電することはありません。この仕組みは法律(道路運送車両法)で決められているので、すべての電気自動車に当てはまります。
また、電気自動車の安全基準は非常に高く、通常の水没(水圧)や衝突でバッテリーが破損することはないといいます。実際、台風や津波などで多くの電気自動車やハイブリッド車が浸水・水没の被害に遭いましたが、今のところ水没による直接的な漏電や火災被害は報告されていないようです。
ただし、水が引いたあとの処置には注意が必要です。バッテリー内部に水や泥が入ったままエンジンをかけてしまうと、エンジンの故障や火災に繋がりかねません。また、電気自動車は水没でショートはしませんが、浸水した状態の車をそのまま放置し、バッテリー内部に浸水した場合はショートして発火するおそれがあります。電気自動車に限りませんが、水が引いても絶対に自分でエンジンをかけないこと、そして速やかにディーラーや整備工場に相談することが大切です。
ガソリン車やディーゼル車の場合はバッテリーのマイナス端子を外して絶縁処理を行うなどの処置が必要です。万が一に備えてメーカーのホームページや取扱説明書などで浸水や水没した際の対応について事前に確認しておきましょう。
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地震対策などと比較して遅れがちだった水害対策ですが、近年、政府や自治体による新しい取り組みが行われています。そのひとつが浸水センサーを使った水害対策です。国土交通省が中心となり小型の浸水センサーを複数設置し、情報を収集してスピーディな初動に繋げようというもので、令和4年度(2022年)から実証実験が始まりました。
センサーの製作には企業が複数参画していますが、どのセンサーも手のひらに乗るほどの小さなものです。これらを浸水や冠水が起きやすい場所にある電柱やカーブミラー、自販機など、地上から高さ10センチ〜90センチほどのところにたくさん取り付けます。このシステムは、水位が一定量を超えるとセンサーから自治体の防災課や職員に通知が届き、迅速に現地の状況確認が行われるという仕組みです。
国土交通省が公開しているマップでは、センサーが取り付けられている場所、浸水が起きている場所をリアルタイムで見ることができます。
この実証実験は、初年度の2022年度に5つの自治体からスタートしましたが、2024年度には162自治体・45企業まで増加しました。将来的にはワンコイン(500円)程度の価格での普及を目指しており、そのため「ワンコイン浸水センサ」と名付けられています。実用化されれば、ピンポイントで冠水しそうな場所をよりスピーディに発見し、速やかな初動に繋げられると期待されています。
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自然災害を止めることはできなくても、私たち一人ひとりが被害を最小限に食い止めるためにできることはたくさんあります。高い安全基準で作られている電気自動車でも決して過信せず、まずは大雨の時には危険な場所には近寄らないのが大原則。さらに、政府や自治体からの情報、天気予報もこまめにチェックして、命と大切な愛車を守りたいものです。
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