IoT(Internet of Things=モノのインターネット)やAI(Artificial Intelligence=人工知能)などのデジタル技術は、私たちの生活をより快適に、より便利にしてきました。そして現在、製造現場で進むDXが、モノ作りの現場を大きく変えようとしています。スマートファクトリー(スマート工場)とIoTが拓く新しい産業革命とは、どんなものでしょうか。DXが変革させるビジネスと社会を考えます。
DXによるビジネスの新たな局面 スマートファクトリーとIoTが拓く産業革命
デジタイゼーション、デジタライゼーションの先にある、DXとは
DXとは、Digital Transformationの略で、デジタル技術の活用によって変化・変革(transform)を起こすことです。これと似た言葉に「デジタル化(デジタイゼーション、デジタライゼーション)」や「IT化」がありますが、こちらは紙ベースで行っていた仕事を電子化するなどの「手段」であるのに対し、DXはその先、デジタル化やIT化によって顧客満足度を上げたり、新しいビジネスモデルを創出したり、社会や生活を変えることを意味しています。
ちなみにDigital Transformationなら略語はDTですが、プログラミング用語にすでにDTという言葉があること、また英語ではtransをX(cross)と書くこともあって、DXが使われるようになりました。
どの業界でもDXはひとつの大きな流れになっています。すでにDXは新しいビジネスモデルも生み出しており、そのひとつが「自分で所有せず、必要な時に必要なだけ使う」という考え方、いわゆる「XaaS(X as a service)」です。XaaSではサーバーやOS、ソフトウェアを自前で揃えずとも、クラウド上で提供されているものを利用できます。サブスクリプションやシェアリングも、DXによって普及しました。
さらに、近年では製造業でのDXが新しいムーブメントを生み出しています。それがインダストリー4.0です。
第4次産業革命?スマートファクトリーを推し進めるインダストリー4.0とは
インダストリー4.0はドイツが2011年に打ち出した構想で、「第4次産業革命」と訳されます。1760年代、イギリスで起こった最初の産業革命は、人や動物が行っていた仕事を水と蒸気の力で機械化しました。第2次産業革命はそれから約100年後。今度は電気や石油、ガスが登場します。工場ではベルトコンベアを利用した流れ作業による大量生産が可能になりました。第3次産業革命は、それからさらに100年後。20世紀後半にコンピュータやインターネットが登場し、今度は様々な産業ロボットや機械が自動的にモノを製造するようになりました。
こうして発展してきた製造業ですが、インダストリー4.0の中心になるのは、IoTとAIです。機械やロボットだけでなく、すべての人・モノ・システムがオンラインで繋がり、どこにいてもデータを収集し、自動的に対応することが可能になります。
これはとても効率的なシステムで、カーボンニュートラルやエネルギーの削減だけでなく、アニマルウェルフェアや人権・貧困問題など、様々な問題の解決に関わってくると考えられています。そしてもちろん、新しいビジネスモデルも構築されようとしています。その核となるのが、「スマートファクトリー」です。
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IoTとデジタルツイン フィジカルとサイバーを融合して実現するスマート工場
スマートファクトリー(スマート工場)には、インダストリー4.0のコンセプトが凝縮されています。センサーやデジタルツイン(現実の世界から集めた情報を仮想空間に構築し、仮想空間上で行った改善を現実世界にフィードバックして役立てることができる)が収集したデータを、すべての工場、設備、事務所や本社が共有。何がいつどこで製造され、どこに納品されるかといった情報を可視化し、さらに自動で対応します。
そこではどんなことが可能になるでしょうか。例えばある製品の一部を変更する場合、今までなら人がデータを入力し直し、工場のラインを組み替える作業が必要でした。しかし、スマートファクトリーでは発注によって自動的に作業内容が変更され、すぐさま生産に反映されます。また、センサーがどこかに異常を発見すると、人の手を借りずに直すことさえやってのけます。まさにスマートな、「考える・賢い」工場ですよね。
これを実現したのが、あるアメリカの有名なバイクブランドです。このブランドのバイクはカスタム発注がデフォルト。通常なら、ひとつひとつ内容が異なるカスタムメイドの自動生産は不可能です。しかし、このスマートファクトリーでは、発注が入ると必要な部品が自動的に揃えられ、製造も自動で始まります。その結果、締め切りギリギリまで注文を受けることが可能になり、部品の在庫が大きく減って必要な人員も半減しました。
スマートファクトリーは、「オーダーメイドを工場で生産する」という、「マス・カスタマイゼーション」を実現したわけです。インダストリー4.0には今後、製造業だけでなく様々な事業に応用され、新しい革新的なビジネスモデルを創出することが期待されています。
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DXは産業革命となりえるか 新たな視点の価値創造が新しいビジネスモデルへの鍵
インダストリー4.0には、通信環境やセキュリティ、導入コストなどの課題のほか、人の仕事が奪われるのではという不安の解消も必要です。とはいえ私たちの好みが多様化している今、インダストリー4.0は、新しい視点のビジネスモデルを生み出すことでしょう。そして、さらには私たちのライフスタイルさえも大きく変えていくかもしれません。
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