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交通のIoT!渋滞回避にETC、カーナビも安全も支えるITSとは

2025.2.17

カーナビやETCなどは、私たちのドライブを快適にしてくれる便利なシステムです。近年はこうした身近なものがインターネットにつながることで進化し、交通の安全性や利便性はさらに向上しています。その背景にあるのは、30年にわたり国を挙げて進められてきた「ITS」という取り組み。ネットワークやビッグデータを活用し、情報通信技術で道路交通を支えるITSについて解説します。

ITSとは―情報通信技術の力で事故や渋滞を回避

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DXが進み、多くのモノがインターネットにつながるIoT社会では、交通のあり方も大きく変わってきています。こうした変革を推し進めるのがITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)です。国土交通省のウェブサイトでは、ITSについて「最先端の情報通信技術を用いて人・車両・道路のネットワークを構築することにより、交通事故や道路渋滞などの道路交通課題を解決し、安全性・利便性の向上を目指すシステム」と説明しています。

これまでも、交通事故を防ぐための機能を搭載したASV(Advanced Safety Vehicle:先進安全自動車)の開発、渋滞緩和に向けた情報提供や道路交通管理の効率化などが進められてきました。ITSはそのような個々の仕組みをインターネットでつなぎ、交通の安全性と利便性をさらに高めようという取り組みです。

ITSは1996年に20年間の長期ビジョンをもって全体構想がとりまとめられ、9つの開発分野と21のサービスが設定されました。以後、産官学民が連携し、ITSは国家プロジェクトとして推進されています。では構想から30年近くが経過した今、ITSはどのように発展しているのでしょうか。

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道路交通情報を活用するカーナビやETC…ITSで進化する身近なシステム

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ITSの9つの開発分野とは、「カーナビゲーション」「ETC」「安全運転支援」「交通管制」「道路管理」「公共交通運行管理」「商用車運行管理」「歩行者支援」「緊急車両管理」です。

このなかで特に私たちに身近なものといえば「カーナビゲーション」でしょう。ある調査によると、今では自動車所有者の8割以上がカーナビを設置しているといいます。カーナビが1981年の販売開始以来、多くの機能を追加しながら進化を遂げてきたなか、ITSの一環として開発が進められてきたのが「VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)」です。

VICSは、道路上に設置されたビーコンと呼ばれる通信装置とFM多重放送を使って交通情報や周辺情報をカーナビにリアルタイム送信するシステムです。現在ほとんどのカーナビにはVICS受信機が内蔵されており、道案内という役割を超えて安全でスムーズな走行に役立っています。

また「ETC」は、高速道路での自動料金決済に通信機能がプラスされた「ETC2.0」に進化しています。ETC2.0対応のカーナビやスマホがあれば、高速道路に設置されたITSスポットを通して渋滞や落下物、災害などの情報を受け取れます。

そのほか、道路にセンサーや通信機器を設置し、個々の車と双方向で通信することで出合いがしらの衝突や歩行者の見逃しを防止するための「DSSS(Driving Safety Support System:安全運転支援システム)」や、バスの位置がリアルタイムでわかる「バスロケーションシステム」なども開発されてきました。いずれも情報通信技術の活用によって安全でスムーズな交通の実現を目指しています。

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ビッグデータやAIも活用し社会問題解決の糸口も…車×ネットで進むITS

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こうした取り組みの成果もあって交通事故の死亡者数は右肩下がりで、2004年から2024年までの20年の間に6割以上減少しています。

交通事故件数も減ってきていますが、一方で高齢者は死亡事故を起こしやすいことがわかっています。社会の高齢化に伴って高齢ドライバーは増加傾向にあり、また年齢にかかわらず一人ひとりの安全確認には限界があるものです。今後は、道路と車の通信ネットワークを活用したより高度な運転支援が求められるでしょう。

道路交通をさらに安全で快適なものにするには、人口減少や労働力不足、気候変動、エネルギーなどさまざまな社会問題にも向き合っていく必要があります。そこで交通だけでなく、地域が抱える課題に応じた総合的な取り組みが各地で進んでいます。

たとえば愛知県豊田市では、電柱にセンサーを設置し、自動運転バスと通信して安全走行を目指すシステムの実証実験が行われ、香川県の小豆島では自動運転バスのほかAI自動運転ボートの運航試験も実施されています。また千葉県柏市では、路面に埋設された送電コイルから走行中の電気自動車に電力を送るプロジェクトが進み、雪の多い青森県では、ビッグデータなどを活用して除雪体制を強化することを目的とした「スマート除雪システム」が運用されています。そのほか高知県の複数の市町では、運行本数が減った路線バスにかわる住民の移動手段としてデマンド型乗合タクシーを導入しています。

このように、ITSで事故や渋滞防止など道路上の交通課題を解決しようという取り組みは、持続可能なモビリティ社会を目指す総合的な施策へと進化・発展しているのです。

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近い将来、路面にさまざまなセンサーやIoTデバイスが埋め込まれ、収集した交通情報をAIが分析して渋滞の発生などを予測し、それを受け取った車がより適切なルートを自動運転で走行する…そんな社会になるかもしれません。ITSによって事故や渋滞を減らせるだけでなく、スムーズな交通は環境負荷の低減にもつながるでしょう。多様な社会課題の解決に寄与するITSにますます期待が高まります。


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【執筆】ユピスタ編集部
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