近年国を挙げてドローンの活用が推進されており、空撮はもちろん、ドローンを使った配送実験も珍しいものではなくなりました。送電線を使った新しい航路拡大の取り組みも始まっており、また活躍の場は水上や水中にまで広がっています。ドローンを動かすバッテリーの仕組みとともに、政府による新しい「空のロードマップ」から今後のドローン活用の行方を解説します。
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近年国を挙げてドローンの活用が推進されており、空撮はもちろん、ドローンを使った配送実験も珍しいものではなくなりました。送電線を使った新しい航路拡大の取り組みも始まっており、また活躍の場は水上や水中にまで広がっています。ドローンを動かすバッテリーの仕組みとともに、政府による新しい「空のロードマップ」から今後のドローン活用の行方を解説します。
ここ数年の間に、すっかりおなじみになったドローンですが、「ドローン(drone)」という言葉の由来をご存じでしょうか。「ドローン」は古い英語で「オスのミツバチ」を意味しており、飛行する際のプロペラの音が蜂の羽音のように聞こえることから名づけられたといわれています。
最近は空中を飛ぶだけでなく、水上・水中で活躍するドローンも増えています。河川やダム、下水道などに潜って生態系や構造物の撮影・調査を行ったり、水中遺跡や事故現場で探索・捜索にあたったり、養殖場での魚介類への給餌や密猟対策などにも活用されています。
水中ドローンに求められるのは、水圧に耐えられる頑丈な機体と、濁った水中でも撮影できる高性能のカメラです。また水中は電波が届きにくいため、水中ドローンの多くはケーブルでコントローラーと繋がれており、「ROV(Remotely Operated Vehicle:遠隔操作型無人潜水機)」と呼ばれるものが一般的です。
こうしたドローンを動かしているのは、スマホなどでも使われているリチウムイオンバッテリーや、その一種であるリチウムイオンポリマーバッテリー、通称「リポバッテリー」です。小さくても重量感のあるリチウムイオンバッテリーと比べると、リポバッテリーは電解質がゲル状で軽いというメリットがあり、ラジコンなどにも使われています。充放電の仕組みはリチウムイオンバッテリーと同じですが、エネルギー密度や電圧が高く、軽量でありながら大容量・大出力で、安定航行が求められるドローンにはぴったりの電源だといえるでしょう。
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近年、日本では新しい試みとして、送電線網を活用したドローン航路整備に注目が集まっています。この試みでは、従来の操縦者による手動操作やGPSからの位置情報を使った自動運転とは異なり、ドローンが送電線に沿って上空を自動飛行するシステムが採用されています。
たとえば電力会社における送電線の点検は、これまで作業員が高所に上って直接確認したり、ヘリコプターで撮影した画像をチェックしたり、といった方法で行われており、作業員の高齢化や人材不足、作業の危険性、コストなど多くの課題がありました。ドローンを使えばリアルタイムで撮影データを取得して目視点検できるようになり、人的負担や費用負担の軽減に繋がります。
また、ドローンは送電線に沿って飛行しながら自動的に撮影を続けるため、作業員には高度なドローン操縦技術も撮影技術も必要ありません。すでに埼玉県秩父市をはじめ、いくつかの地域で実証実験が行われており、点検コストの大幅な削減や生産性向上が認められています。
現在は送電線点検を中心に準備が進められている段階ですが、今後は災害対応や物流などでの活用も期待されています。送電線はすでに全国に130万km以上張り巡らされており、既設の送電網を活用できるので土地所有者との権利関係などの調整がしやすいというメリットがあります。このため、2027年度にはドローン航路は全国で1万キロ程度にまで拡大されることが見込まれています。一方で飛行ルートが限定される、天候の影響を受けやすいといった課題から、さらなる技術革新や環境整備が必要でしょう。
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2024年11月に政府から「空の産業革命に向けたロードマップ2024」が公表されました。これまで2022年の「レベル4飛行(完全自律飛行)」の解禁をはじめとする法整備や、ドローンの航路拡大など、環境整備と技術開発が推進されてきましたが、いよいよドローンの社会実装が本格化されようとしています。
ドローンの社会実装は離島や山間部などの過疎地域への配送から段階的に進められる計画ですが、政府は防災・災害対応も重視しています。2024年1月の能登半島地震では、ドローンを使った捜索・救助、携帯電話回線の電波中継、被災状況確認が積極的に行われました。この経験から見えてきた課題やニーズに対応するべく、ロードマップでは平時からパイロットの育成やドローンの配備などに力を入れ、災害時の活用を促進するとしています。
そのほかにもスマート農業、有害鳥獣対策、警備や測量など、さまざまな分野での社会実装が期待されています。
さらなる軽量化や飛行時間・距離の延伸に向けたバッテリーや動力システムの開発、また多数のドローンが同時に、そして安全に飛行するための運行管理技術の強化なども推進されています。ニーズに応じたドローンの活用が広がることで、業務の効率化や高度化、サービスの質向上が加速し、持続可能な社会インフラの実現に近づくでしょう。
☆あわせて読みたいドローンは上空から地上を撮影するだけでなく、送電線の点検や配送への活用も見込まれ、また空から水上・水中にまで活躍の場を広げ、私たちの暮らしを支えてくれています。今後はさらに技術開発が進展し、環境が整備され、社会においてますます欠かせない存在になっていくでしょう。将来に向けて、航空機や空飛ぶクルマも含め「空モビリティ」施策がどのように進められていくのか、水上・水中ドローンの可能性がどこまで広がっていくのか、楽しみでなりません。
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