地球環境に及ぼす影響を考え、二酸化炭素を排出しないエンジンの開発・実証実験が、船や自動車をベースにして進められています。そして、その切り札となるかもしれないものがアンモニアです。すでに小型アンモニアエンジンは、2026年度の実用化を目指すところまで研究が進んでいます。カーボンニュートラルの実現という大きな目標に向け、その一翼を担い始めている電気自動車や水素燃料電池車の動力源に続き、アンモニアもそれに迫る新たなエネルギーとなり得るのでしょうか。注目の新エネルギー、アンモニア燃料について解説します。
電気や水素に迫る?アンモニア燃料の船や自動車でカーボンニュートラル実現へ
肥料での活用にとどまらない!アンモニアの驚くべき使い道とは
アンモニアというと、独特の刺激臭を思い浮かべる人も多いでしょう。アンモニアは一般的にマイナスのイメージを持たれがちな化学物質かもしれませんが、実は私たちの生活に欠かせない、とても重要な物質なのです。
アンモニアの化学式はNH3。つまり、窒素(N)と水素(H)でできている物質です。窒素や水素の用途はとても広く、例えば窒素はアミノ酸やたんぱく質の元になり、植物の成長には欠かせません。しかし、植物は窒素をそのまま吸収利用することができないため、窒素をアンモニアに変換します。空気中の窒素を使って化学合成されたアンモニアは、肥料として植物を育てることによって世界中の食を支えてきました。
一方の水素は脱炭素社会に欠かせない物質として近年最も脚光を浴びている物質です。ただ、水素を貯蔵・運搬するのは中々難しいので、ここでもアンモニアが利用されます。まず、水素をアンモニアに変えて貯蔵・運搬し、利用する時に分解して水素に戻すのです。このように水素の「キャリア(輸送媒体)」としてアンモニアを使う方法が研究されています。
さらに、最近はこれと異なるアンモニアの使い方が注目されています。アンモニアには炭素(C)が含まれていないため、燃やしても二酸化炭素が排出されません。これを受けてアンモニア自体を次世代のクリーンエネルギーとして利用するというアイデアが期待を集めているのです。
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電気自動車や船舶に?アンモニア燃料が次世代エネルギーとして注目されるワケ
エネルギーとしてアンモニアを使う方法のひとつは、火力発電を行う時にアンモニアを石炭と混ぜて燃やす「混焼(こんしょう)」です。現在、日本では火力発電によって毎年2億トンの二酸化炭素が排出されています。前述のように、アンモニアは燃やしても二酸化炭素を排出しません。ですから、石炭の2割をアンモニアに置き換えれば2割、つまり二酸化炭素の排出が4000万トン減ることになります。
すでに愛知県の火力発電所では混焼を20%取り入れ、2021年から実証試験が行われており、将来的にはすべてをアンモニアに置き換えて「専焼(せんしょう)」とすることも視野に入れています。もし、これが実現すれば年間2億トンの二酸化炭素排出をゼロにすることができます。
また、天然ガスの代わりにアンモニアを燃焼させてガスタービン発電に利用する、さらには燃料電池の水素をアンモニアに置き換えるなどの研究も進んでいます。こうしたアンモニアによる発電は工業用に加え、電気自動車や船舶用のディーゼルエンジン、家庭用の発電システムにも利用できると考えられています。
アンモニアは長い間、日常生活の中でも様々な形で利用されており、どう取り扱えば良いのかマニュアルが完成しています。運搬や貯蔵の方法も確立されていますし、既存施設はそのまま使用できます。火力発電で混焼を行う場合も、バーナーを専用のものに変えるだけで対応できてコストを抑えられるなど、アンモニア発電には多くのメリットがあるのです。
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エネルギーは地産地消からサプライチェーンの構築へ グリーンアンモニアの課題
アンモニア燃料が本格的に運用されるに当たっての課題は生産と供給です。まず、アンモニアが燃焼する時に二酸化炭素は発生しません。しかし、アンモニアの原料となる水素を、従来の製造法、つまり化石燃料を使う方法で作ると、その時に二酸化炭素が発生します。これではせっかくアンモニアを使って発電する意味がありません。そのため、まずは太陽光発電などでグリーン水素を作り、それを原料にしたグリーンアンモニアの生産が目標とされています。
また、アンモニアは燃焼時に窒素酸化物という大気汚染物質を排出してしまいます。そこで、火炎の温度や混焼の割合を変えるなど、窒素酸化物を抑制する方法が研究されています。
アンモニアはこれまで多くの国で肥料として「地産地消」されており、輸出入されることはほとんどありませんでした。しかし、アンモニアが石炭に変わる燃料として活用されるようになると、国内の生産だけでは量が不足するため、製造を拡大したり、国外からの輸入を考えたりすることが必要となります。サプライチェーンの構築といった課題をクリアし、アンモニア燃料の運用が本格的に始まるのは2030年頃、そして専焼が可能になるのは2040年代と見られています。
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次世代エネルギーの有力候補!アンモニア燃料がカーボンニュートラルを後押し
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