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電気自動車vs水素自動車の戦い!Society5.0で10年後どうなる?

2025.4.7

内閣府が提唱する未来社会「Society5.0」の実現に向けて注目されている、環境に優しいクルマ。その代表選手が、電気で走る電気自動車と、水素で走る水素自動車です。それぞれの開発状況は、今どうなっているのでしょうか。2種類の次世代自動車、それぞれのメリットと課題、そしてその未来について解説します。

次世代自動車の大本命!電気自動車の仕組みとメリットとは

電気自動車

電気自動車はバッテリーに蓄えた電気でモーターを駆動し、タイヤを回転させる車両です。エンジンを搭載せず電気だけで走行するEV(電気自動車)だけでなく、エンジンとモーターの両方を搭載しているハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)もEVの一種と呼ばれることがあります。

電気自動車の最大のメリットは、走行時にガソリンや軽油を燃焼しない、または燃焼量が少ないため、環境への負担を軽減できることです。製造時や発電所ではCO2を排出しますが、それでも日本のガソリン車を電気自動車に置き換えることでCO2排出量を約半分まで削減できるとされています。

また、電気自動車には経済的なメリットもあります。ガソリン車と自宅充電が可能な電気自動車を比較すると、電気自動車の走行コスト(充電代)はガソリン車の燃料代の約半分です。電気自動車の価格は約250万円からと、ガソリン車に比べてやや高額ですが、購入時には補助金が支給され、エコカー減税をはじめとした優遇措置も受けられるため、維持費を抑えられます。結果として、コストパフォーマンスに優れているといえるでしょう。

さらに、電気自動車に搭載されている大容量バッテリーは、停電や災害時などに非常用電源として活用することができます。一般的な電気自動車は一般家庭の2〜3日分の電力を蓄えることが可能です。また、走行時に騒音や振動が少なく、より快適なドライブを楽しめる点も電気自動車の大きな魅力です。

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注目の水素自動車−水素エンジン車と水素燃料電池車の違いは?

電気自動車

一方、水素自動車には、水素を利用して走行する車が2種類あります。まず、水素エンジンを搭載し、ガソリンの代わりに水素を爆発的に燃焼させて走る水素エンジン車。仕組みはガソリン車と似ていますが、燃料が水素のため、走行時にCO2を排出しません。

もうひとつは、空気中の酸素と車両に積載された水素の化学反応によって発電し、その電力でモーターを駆動させる水素燃料電池車(FCV)です。水素と酸素の反応で排出されるのは水だけであり、CO2は一切発生しません。そのため、水素自動車は「究極のエコカー」として注目を集めています。

水素が尽きた場合には、水素ステーションでの充填が必要となりますが、約3分程度で満タンにできる点や、1回の充填で長距離走行が可能な点も水素自動車のメリットです。例えば、電気自動車の航続距離が400km程度であるのに対し、エネルギー効率が高い水素自動車は1回の水素充填で約650〜750km走行することが可能です。また、電気モーターによる走行のため、走りが静かで滑らかであることも特徴です。

さらに、EV車と同様に、FCV車も災害時などに非常用電源として活用することができます。実際に、2018年の北海道胆振東部地震では、公用車のFCVから避難所におけるテレビや照明、携帯電話への給電が行われました。また、水素の製造には水の電気分解や生ごみなどのバイオマス資源を利用するなど、さまざまな可能性があり、この点も高く評価されています。

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電気自動車がリード!電気自動車vs水素自動車 実用化の現在地

電気自動車は、軽自動車を含め、各メーカーからすでに多くの車種が販売されており、選択肢は豊富です。日本でのEV販売台数の割合は、2023年には1.66%(約4万4,000台)でした。まだ1%台ではありますが、2020年の約0.6%(約1万5,000台)と比較すると、3年で4倍に成長しており、EVの購入が選択肢に入りつつあると考えられます。

世界に目を向けると、電気自動車(EV)の普及率は2023年に18%、販売台数は1,000万台を突破し、2030年には40%を超えるという予測もあります。普及目標を設定している国も多く、たとえば中国は2027年までに45%の普及を目指しています。日本政府も、「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」という目標を掲げており、すでにいくつかの国ではガソリン車の新車販売が禁止されています。

一方で、FCVの世界販売台数はEVの1,000分の1(2023年)に過ぎません。日本での普及率も2023年度では0.02%(約422台)と非常に低い状況です。また、水素エンジン車はカーレースなどでの試験的な使用が進められていますが、いまだ市販化には至っていません。

国内の大手メーカーは「水素自動車の開発は富士登山に例えると4合目」と述べており、現時点では実用化も普及率も電気自動車に及ばないのが現状です。水素自動車が一般に普及するまでには、まだ相当な時間がかかると考えられるでしょう。

利用拡大に向けて。電気自動車、水素自動車それぞれの課題とは

電気自動車

普及が進む電気自動車にも課題があります。まず、充電に時間がかかることです。急速充電でも30分程度かかるため、充電ステーションが混雑している場合には1時間以上待つことになるかもしれません。また、航続距離もガソリン車より短いため、目的地にたどり着けるか不安を感じながら走行する場面があるかもしれません。

さらに、電気自動車にはレアメタルが使用されるため、地下資源の枯渇が問題視されています。加えて、リチウムイオン電池のリサイクルコストが高額である点も課題となっています。

一方、FCV(燃料電池車)の課題としては、まず車両価格が挙げられます。新車価格は700万円〜800万円と、補助金があるとはいえガソリン車や電気自動車に比べるとかなり高額です。これは、水素や燃料電池の製造に多額のコストがかかるためです。たとえば、FCV1台においては、希少なプラチナが約40g使用されています。

また、水素を貯蔵するタンクが大きいため、FCVは大型車を中心に開発される傾向があり、これが一般普及の妨げの一因となっています。そこで、燃料電池車にプラグイン(差し込み用のアタッチメント)を併用し、電気と水素のどちらも使用可能なPHEV(プラグイン・ハイブリッド車)の開発も進められています。

さらに、水素エンジン車については、CO2を排出しない一方で、別の有害な気体を発生させる場合があるという実験結果も報告されています。

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水素自動車普及のカギとなる水素ステーションの今

電気自動車

水素自動車普及の最大の課題となっているのが、水素ステーションの整備です。水素ステーションは、燃料電池自動車(FCV)に水素を供給する重要な施設ですが、ガソリンスタンドの建設費用が7,000万〜8,000万円程度であるのに対し、水素ステーションの建設には土地代を除いて約4億円が必要です。また、維持費も年間3,000万〜4,000万円と非常に高額なため、容易に増設することはできません。

さらに技術的な課題として、水素ステーションでは水素を車両に充填するための資格を持ったスタッフが必要です。そのため、ガソリンスタンドのように「セルフサービス」を導入することが難しい現状があります。

その結果、EV充電スタンドは全国に約2万5,000カ所以上設置されています(2025年2月時点)が、水素ステーションは170カ所程度(2024年4月時点)しかありません。しかも東京、愛知、大阪など主要都市圏に集中しているため、それ以外の地域に住む人々がFCVを購入する可能性は非常に低くなるでしょう。

日本政府は補助金や助成金などの施策を進めるとともに、2025年までに水素ステーションを320カ所、2030年までに1,000カ所整備する計画を立てています。また、「水素・燃料電池戦略ロードマップ」では、2025年までにFCVの普及台数を20万台、2030年代までに80万台に増やすことを目指しています。

水素が牽引する?Society5.0実現を目指す社会に求められるもの

電気自動車

日本で排出されるCO2のうち、12〜15%は自動車から発生しており、環境に優しい車の普及は重要な課題となっています。

また、電気自動車は自動運転やMaaS(Mobility as a Service=移動サービス)との相性が良く、今後これらの機能も加わっていくことが予想されます。将来的にはそれぞれの特性を活かし、EVは小型車、FCVは建設機器や長距離トラックなどの大型車両を中心に使用されるようになると考えられています。

ただし、安全で効率的なSociety 5.0(ソサエティ5.0=現実と仮想空間が一体化し、発展と問題解決が両立した社会)の実現を目指すには、車両の開発だけでは不十分であり、社会全体を構成する多くの分野が連携することが求められます。

たとえば、EVやFCVのいずれにおいても、製造時にはCO2が排出されるため、サプライチェーン全体での取り組みが不可欠です。あらゆる分野においてエネルギーの使用量を抑制するためには、運行の最適化が必要でしょう。電気や水素など、多様なエネルギーを効率的に活用することが、カーボンニュートラルを実現するための最短の道といえるかもしれません。

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ゼロエミッションに向けて避けて通れないクルマは切磋琢磨して未来を創る

ゼロエミッション(廃棄物の排出をなくすこと)の実現を考えるとき、避けて通れないのが自動車の進化です。今後も電気自動車と水素自動車が切磋琢磨しながらカーボンニュートラルを推進し、私たちの未来を築いていくことでしょう。電気や水素など、多様なエネルギーを効率的に活用することが、カーボンニュートラルを達成するための近道といえるかもしれません。

(2023年5月8日新規掲載:2025年4月7日更新)


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【執筆】ユピスタ編集部
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